“森林循環”の重要性|問題点・課題と取り組み事例、SDGsとの関係性

“森林循環”の重要性|問題点・課題と取り組み事例、SDGsとの関係性

SDGsについて考える上で欠かせないキーワードが「森林循環」です。

しかし、森林循環の意味やその重要性、実現するための具体的な取り組みについてはあまりよく知られていません。

そこで今回は、森林循環の重要性から世界・日本が抱える問題点、森林循環を実現させるための具体的な取り組み例まで詳しく解説します。

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このコラムのポイント
●森林循環は、木々の二酸化炭素吸収力を高め、環境問題解決やSDGs実現に大きく貢献します。

●世界・日本では森林循環を妨げる問題がいくつもあります。

●日本では森林循環を活性化させるために国・地方自治体・民間が協力し、様々な取り組みを実施しています。

●恩加島木材は国産材・地域材の活用や間伐材・小径材を原料とした人工突板の開発を通じて、環境に配慮した高品質な突板内装建材を製造販売しています。


森林循環とは|重要性・SDGsとの関係

森林循環(森林サイクル)とは

森林循環とは「植林・間伐・伐採(主伐)・利用・再植林」のサイクルを指し、地球温暖化対策やSDGs実現に関する重要なキーワードです。

森林サイクル
(引用:国土交通省|健全な森林づくり

森林循環がなぜ地球温暖化対策やSDGs実現に関係するかというと、若い木ほど成長の過程で多くの二酸化炭素(CO2)を吸収するからです。

日本における森林の30%(人工林の70%)に生育するスギとヒノキは、樹齢が20歳以下の木と20歳超えの木が吸収する二酸化炭素量を比べると、後者の方が多いという調査結果もあります。(参考:林野庁|よくある質問

つまり、老木がたくさんある森林よりも、定期的に伐採・植林が繰り返されている森林の方がより多くの二酸化炭素を吸収し、環境問題解決に近づくという訳です。

林野庁の調べでは、成長の過程で優良な木を残してその他を間引く間伐作業も、森林の二酸化炭素吸収量増をもたらすことが分かっています。

間伐すると森の二酸化炭素吸収量を減らすように感じますが、間伐によって優良な木々の成長が促進され、森林全体の二酸化炭素量はむしろ増えるのです。

また、間伐されず長期間放置された森林は木々が弱くなり倒木して、その後腐食する過程で二酸化炭素を排出する可能性もあります。(参考:林野庁|よくある質問

【世界】森林循環を妨げる問題点と課題

【世界】森林循環を妨げる問題点と課題

地球温暖化に歯止めをかけて持続可能性を高める森林循環ですが、それを妨げる問題はいくつもあります。

無計画な農地・宅地への転用

森林保有面積の大きい南米やアフリカでは、経済発展の過程で森林が無計画に農地や宅地へ転用されています。

アジア・北米・欧州では植林が進められているものの、南米・アフリカではその面積の何倍もの森林が失われているのです。

森林面積の推移
(引用:林野庁|国際的な取組の推進(1)


違法伐採

違法伐採とは、その国や地域の法令に違反した森林伐採を指し、森林の急激な減少や木材の価格崩壊をもたらす世界的な問題です。

  • 盗伐(所有権・伐採権のない森林での不正規伐採)
  • 伐採許可量を超えた過度な伐採
  • 国際条約によって保護されている樹種の伐採
  • 森林保護地域内での伐採
  • 森林計画で定めた伐採量・樹齢(径級)に沿わない伐採

最近は日本でも盗伐のニュースをよく耳にしますよね。

林野庁のデータによると、2014年の丸太・製材にかかわる違法伐採貿易額は世界で約63億ドルにも上り、全世界の森林伐採の15~30%が違法であるとも言われています。(参考:林野庁|木材需給の動向(4)

違法伐採を取り締まるため、2017年にはクリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)が制定されましたが、根本的な解決には至っていません。

焼畑農業の継続

焼畑農業とは、東南アジアや南米、アフリカで古くから伝承されている農業で、その土地に生える草木を焼き、残った灰を肥料にする手法です。

焼畑農業は2〜3年サイクルで場所を変えて継続するため、森林の再生が追いつかず、結果的に森林面積が減っているのが現状です。

森林火災の増加

北米やヨーロッパを中心に、焚き火や花火、タバコの火など人為的要因による森林火災が増加しています。

オーストラリアでは高度乾燥による森林火災は少なくありません。

森林火災や完全に消火するまでに時間がかかるため、一度の発生でも広い面積の森林が焼失してしまうのです。

世界資源研究所(WRI)は、2002年比で2020年に火災で失われた森林面積は2倍に増えており、毎年約1,980万ヘクタール(日本の約1/2)もの面積が焼失していると分析しています。

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【日本】森林循環を妨げる問題点と課題

森林循環を妨げる問題点と課題

日本はその国土のおよそ60%を森林が占める“森林大国”ですが、世界とは異なる問題によってその循環が妨げられています。

森林伐採量の減少

日本では世界で起こっている森林減少は進んでおらず、1960年代から森林面積は横ばいです。

(引用:林野庁|「森林資源の現況」について

しかし、森林蓄積量は1966年から2022年でおよそ3倍にまで増えており、伐採が進んでいません。

森林蓄積量とは森林資源の量を指し、林業目的の人工林においてはその蓄積量は60年弱で6倍以上にも増えています。

(引用:林野庁|「森林資源の現況」について

森林蓄積の増加は、伐採量の減少を意味し、老齢化した樹木の増加と森林循環の停滞を表します。

日本の人工林に生えている木の樹齢は60年(12齢級※)が最も多いというデータがあるほどです。

(引用:林野庁|「森林資源の現況」について

※齢級: 森林の年齢を5年ごとにまとめた単位で、人工林は植栽後1~5年経った木を1齢級とし、6~10年経った木を2齢級とする。

標準伐期齢は、スギが35〜50年、ヒノキが45〜60年と、今まさに伐採に適した年数を迎えていますが、近年の建築構造多様化や輸入材下の依存によって、長年放置されている現状は否めません。(参考:林野庁|森づくりの理念と森林施業

林業従事者の人手不足・高齢化

森林蓄積が増えている理由の一つとして、林業従事者の人手不足と高齢化が挙げられます。

林業従事者の数は、1980年から2020年のたった40年間で約70%も減少し、65歳以上の割合は25%(2020年)と全産業の15%よりも明らかに高い水準です。(参考:林野庁|林業労働力の動向

政府は「緑の雇用」事業など林業へ若者を取り込むための施策を実施しており、2003年以降は平均3,000人程度の林業従事者が増えているものの、森林蓄積量の増加を解消するまでには至っていません。

所有者不明林・不在村者保有林の増加

日本国内では、所有者不明林・不在村者保有林の増加に伴い、森林管理が行き届かない放置林も増え続けています。

所有者不明林

地籍調査が進んでいない森林や、相続などの際に所有者移転登記が行われず、年数が経って所有者が分からなくなってしまった森林を指します。

不在村者保有林

森林のある市町村には住んでいない人が所有する森林で、実家の森林を相続したり、開発目的で国内の離れた場所や海外に住む人が所有したりするケースが当てはまります。

登記簿上の所有者不明林の割合は森林全体の「28.2%」、不在村者保有林面積は「24%」にまで増えており、森林経営や適切な管理が行われていない森林は657万ヘクタール(東京都約30個分)もあるのが実情です。(参考:林野庁|森林経営管理法の概要と所有者不明森林への対応

所有者不明林と不在村者保有林の増加は放置林の増加を招き、樹木の老齢化がより一層進むことが懸念されています。

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森林循環を実現するための日本における取り組み例

森林循環を実現するための取り組み例

国土の広範囲を森林が占めて木造建築の歴史が古い日本では、森林循環を促すために国・地方自治体・民間が協力して、さまざまな取り組みを行っています。

建築における木材利用促進

日本の森林を循環させるために最も効果的と言われているのが、建築における木材利用の促進です。

なぜなら、日本で利用されている木材のうち、およそ45%が建築に由来する製材用材・合板用であるからです。

日本における木材の需給構造
(引用:林野庁|木材産業の現状と課題

そのため、森林循環を活性化するために建築の木造・木質化と国産材利用が推し進められています。

具体的な取り組みは以下の通りです。

実施時期取り組み
2010年木材利用促進法の制定(公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律)
…公共建築物を対象に木材利用を推進
2021年木材利用促進法の改定(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)
…木材利用の対象を公共建築物のみから一般建築物全般まで拡大
2023年建築基準法改正案交付(2024年4月から随時施行)
…非住宅・中大規模建築物における木材利用を促進のための防火規定を合理化(一部規定緩和)
2020年〜地方創生を目的とした地域材の活用促進
…地域材を利用する建築プロジェクトに対する補助金事業などの実施


ポイント
恩加島木材では、国産材だけではなく地域を特定した地産材(地域材)の活用にも取り組んでおり、産地を指定した突板から作る内装建材のご注文も承っています。


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林業へのサポート

林業の人手不足解決や作業の効率化をはかって森林循環を加速させるために、さまざまな補助事業が実施されています。

※植付け:苗木の購入から植栽までの作業
※下刈り:苗木が早く健康に成長するために、木の下に生える雑草や低木を除去する作業

森林循環マーク認定制度の実施

森林循環マークとは、主にFSC認証制度などの森林認証制度を指します。

FSC認証制度とは森林管理協議会(Forest Stewardship Council)運営する制度で、「森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品」に対して認証マークを発行します。

マークが与えられる製品は主に木材製品や紙製品、パルプ製品などで、消費者が森林循環に貢献している製品を選んで購入できる点がメリットです。

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間伐材の活用

森林の成長を遅らせたり、循環を停滞させる原因として間伐が行われていないことも理由として挙げられます。

その理由はずばり、「間伐が利益を生まない」ことにあります。

間伐作業にかかる費用は主伐採された木材を売って賄われますが、30〜50年かけて育てた木の卸価格は4,000〜10,000円/㎥程度で、間伐にかかる費用を含めると赤字になっている林業者は珍しくありません。

また、間伐材を運び出して薪などの原料として売っても、利益を得られないのが現状です。

この状況を打破すべく進められているのが、間伐材を建築材料として利用する方法です。

小径な木材を、エクステリア用木材や内装材へ活用する動きが進んでいます。

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環境に配慮した「恩加島木材の突板化粧板」

環境に配慮した「恩加島木材の突板化粧板」

“恩加島木材工業株式会社”は、1947年創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使って良質でバラエティに富んだ突板化粧板を作り続けてきました。

突板とは丸太を0.2〜0.3mmと薄いシート状にスライスした素材で、それを表面材として合板やMDF、不燃パネルなどの基材に接着することで化粧板として施工できます。

ポイント
恩加島木材では、

●国産材・地域材の積極的活用
●間伐材・成長の早い小径材を活用した人工突板の開発・製造
●工場での太陽光エネルギー利用

を通じて、林業の再生や森林循環の活性化、SDGs・カーボンニュートラル実現を目指しています。


突板化粧板の魅力は以下の点です。

  • 無垢材と同様のナチュラルな見た目と質感に仕上がる。
  • 工業製品なので品質安定性が高い。
  • 軽量化を実現でき、施工効率性アップにつながる。
  • 温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
  • 希少性があり高価な樹種でも、無垢材より安価で安定して材料を入手しやすい。
  • 原木1本から取れる突板面積は無垢板材よりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
  • 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる変色も抑えられる。
  • 基材によっては防火材料認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすく、対象範囲とそうでない部分の仕上げを揃えられる。


突板化粧板の強みはコスト・デザイン性・施工性・耐久性・品質安定性と多岐にわたります。

突板化粧板の製造から着色塗装・特殊塗装まで全て自社工場で行うため、オリジナリティを表現できる木質建材をお探しの方は、ぜひ恩加島木材までご相談ください。

恩加島木材工業の突板化粧板シリーズ

● 豊富な樹種・木目とUV塗装も選べる「突板化粧板」
● 重い・割れやすい・高コスト・ビスが効かないなどの懸念点を解消した「不燃突板複合板」
● 国内初・組み立てた状態で準不燃認定を取得した「リブパネル」
● 国内初・孔を開けた状態で不燃認定を取得した「有孔ボード」

内装制限の対象となる建築物へご採用いただける製品を取り揃えておりますので、建物の設計デザインに木目を取り入れたい方はお気軽に弊社までご相談ください。


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まとめ

森林循環は地球温暖化に歯止めをかけ、林業・製材業を再生する可能性を秘めています。

しかし、世界・日本の森林循環を妨げる問題はいくつもあり、それを解決するためには木材の積極的利用などが必要です。

恩加島木材では、環境に配慮した高品質な突板化粧板を製造しております。

「思い通りのデザインを実現したい」「環境に配慮した建物にしたい」という方は、レパートリー豊富な恩加島木材の突板製品をご検討ください。