「学校は内装制限を受けない」の真実|法令の詳細や内装木質化、設計ポイントについて解説

内装制限とは火災時に建物利用者が速やかに避難できるためのルールですが、学校はその対象になりません。
ただし、空間によって細かい防火規定があるため、設計や内装デザインする際には注意が必要です。
そこで今回は「学校の内装制限」について詳細な規定を解説します。
最近トレンドの学校における“内装木質化”についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
●学校は原則として内装制限の対象になりませんが、空間の仕様によっては対象に含まれます。
●学校の内装木質化がトレンドですが、内装制限の範囲や生徒の学習環境を踏まえた材料選びが肝心です。
●恩加島木材は国内外から産地にこだわった良質な突板を仕入れ、高品質で施工性・デザイン性の高い木質内装建材を製造販売しています。
Contents
内装制限とは

内装制限とは、建築基準法第35条の2「特殊建築物等の内装」で定められた内装材選定に関する規定です。
特殊建築物に該当する施設において、火災時に多くの人が速やかに避難できるように居室及び廊下などの通路の天井と壁に不燃性能のある下地材や仕上げ材を選ばなくてはいけません。
第35条の2(特殊建築物の内装)
別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない。
(引用:e-GOV法令検索|建築基準法)
「別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物」とは主に不特定多数の人が利用する公共的な用途を持つ建物で、以下のものが該当します。
- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
- 病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など
- 学校、体育館、博物館、図書館、ボウリング場、スケート場など
- 百貨店、マーケット、展示場、ダンスホール、キャバレー、料理店、飲食店、遊技場、公衆浴場など
- 倉庫
- 自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ
- 危険物貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場なども
内装制限を受ける特殊建築物においても、構造種別(耐火建築物/準耐火建築物/その他)や、総床面積、階数などに応じて使用できる材料は「難燃材料・準不燃材料・不燃材料」とそれぞれ決められています。
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「学校は内装制限を受けない」は本当か

特殊建築物に該当する建物でも学校、体育館、ボウリング場、スケート場などの建築物は内装制限を受けません。
ちなみに、幼稚園も学校と同じ規定が適用されるため、原則として内装制限の対象外となります。
その根拠となるのは、建築基準法施行令第128の4「制限を受けない特殊建築物等」です。
なぜ学校が内装制限の対象外になっているかは諸説ありますが、主に以下の点が理由と言われています。
- 2005(平成17年)までは、建築基準法施工令第21条に「学校(大学、専修学校、各種学校及び幼稚園を除く。)の教室でその床面積が50㎡を超えるものにあっては、(中略)3m以上でなければならない」と明記されていた
- 特定多数の人が使用する建物であるものの、避難経路が明確で天井が高いことにより煙が床まで降下する時間が長い
ただし、ここで注意しなくてはいけないのが「学校全体が内装制限の対象外ではない」という点です。
耐火建築物やイ準耐(※)において、高さ31m以下で100㎡以内に防火区画された特殊建築物に該当する場合は、学校であっても内装制限の対象となるので注意しましょう。
※イ準耐:建築基準第2条第1項第9の3(イ)で定める「主要構造部を準耐火構造としたもの」を指し、木造建築全般はこれに該当する。
また、その他の学校でも以下の場所は内装制限の対象です。
- 地階
- 火気使用室(厨房や家庭科室、ボイラー室など)
- 無窓居室およびその避難経路(廊下)
ただし、無窓居室でも排煙装置やスプリンクラーなどの消火設備を設置したり、天井高を6m以上にしたりすると、内装制限の対象から外される可能性があります。(参考:国土交通省|木材を利用する学校づくりの進め方)
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学校の内装デザインを検討する際の注意点

学校は空間によって内装制限の対象になる部位と対象外になる部位が分かれます。
また、主な建物利用者が小さいお子さんであることから、その他で配慮しなくてはいけない点もあるので注意しましょう。
トータルデザイン
内装制限の対象となる場所とそうでない場所ではっきりと仕上げ材を変えることは簡単です。
しかしそれではデザインにまとまりがなく、落ち着かない印象になる可能性があります。
また近年、学校はその地域を象徴するシンボリックな建物になり得ることから、地域特性を表現する場として設計される事例は珍しくありません。
近年は木造や内装木質化にこだわる校舎が増えており、特に内装材については木材や木質建材を採用する事例が増えています。
ただし、内装仕上げ材を木質で統一する場合、内装制限の対象部位をどのような材質で仕上げるかがトータルデザインする上で重要なポイントです。
そのため、内装制限の対象部位とそうでない部位の仕上げの揃う美しいトータルデザインが可能です。
怪我や事故の防止
学校はどんな場所でも怪我や事故のリスクへ配慮する必要があります。
そこで近年注目されているのが、木材です。
木材を細胞レベルで見ると無数の細かい空洞で形成されていて、衝撃吸収性に優れていることが分かっています。(参考:林野庁|木材は人にやさしい)
そのため、床や壁、家具などに採用すると、怪我や事故のリスク軽減につながるのです。
メンテナンス性
学校はお子さんが元気に時間を過ごす場所で、内装材にキズや汚れがつくことは避けられません。
そのため、内装材を選ぶ際は耐摩耗性や耐汚性に優れた材料を選びましょう。
そのため、お好みの樹種・サイズを兼ね備えた化粧板にUV塗装を施して出荷することも可能です。
抗菌性能
コロナ禍以降、壁や造作家具など人の手によく触れる部位や、湿気がこもり雑菌が繁殖しやすい下駄箱などに、抗菌性能のある内装材を採用する事例は珍しくありません。
抗菌性能のある内装材とは、抗菌塗装コーティングが施された材料を指します。
ただし、抗菌塗装とはあくまで菌の増殖や繁殖を抑える効果がある表面コーティングであり、殺菌や除菌の効果はないので注意しましょう。
居心地の良さ・集中できる環境づくり
学校は学びの場であるため、お子さんの居心地がよく集中できる空間づくりが重要です。
そのため、内装デザインを検討する際は、集中力が散漫にならないカラーコーディネートや反射光(眩しさ)・周辺音の軽減など様々な観点から仕上げ材を選びましょう。
実は、お子さんの勉強環境を整える点でも木材は注目されています。
木材には紫外線を吸収して眩しさを軽減する効果や、反射音を小さくする効果があることが認められています。(参考:林野庁|木材は人にやさしい)
学校の”内装木質化”がトレンド|多様なメリット

学校はほとんどの空間が内装制限の対象外であることから、近年は木造や内装木質化を設計コンセプトにする事例は少なくありません。
床・フローリング
一般的に、教室やオープンスペースだけではなく、廊下や階段にもビニル系床材ではなく、木質フローリングを採用する学校が増えています。
壁
内装制限の対象外である教室などの壁(一部もしくは全面)を板張りにする事例が増えています。
体育館や音楽室など音の反響を抑える必要がある空間には、突板化粧板を加工した有孔ボードが採用されるのが一般的です。
天井
学校の天井材はこれまで化粧石膏ボードが主流でしたが、近年は板張り天井や格子天井を採用する事例が増えています。
建具・造作家具
学校ではこれまでポリ合板のフラッシュドアが採用されてきましたが、近年は表面耐久性の高い突板化粧板を用いて、床・壁・天井と統一感のあるデザインにする事例は珍しくありません。
棚などの造作家具も同様です。
学校の内装木質化が進んでいる背景には、いくつかのメリットがあります。
- 木の精油成分(香り)によるリラックス効果・疲労感の緩和・集中力アップ・血圧低下
- 木の精油成分による免疫力アップや消臭・抗菌・ダニの防除効果
- 木材の積極的利用による森林保護や二酸化炭素排出量削減
- 国産材や地域材(地産材)による木育(※)効果
- 内装木質化への補助金制度実施(参考:林野庁|建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧)
※木育(もくいく):木材や木製品に触れながら、木の持つ可能性や地球環境への貢献、文化などを学ぶ活動で、多くの学校にて実施されている。
※メリットの具体的な検証結果は公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|内装木質化した建物事例とその効果-建物の内装木質化のすすめ-をご覧ください。
これらのメリットから、学校建築で木を取り入れる事例が増えているのです。
「地元で育った木材を内装材として取り入れたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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内装制限に対応できる“恩加島木材”の突板化粧板

無垢材と同じく天然木の風合いや木目を活かせるのが突板化粧板で、天然木を0.2〜0.3mmと薄くスライスした突板を表面材として、基材(きざい)のMDFや合板、不燃パネルへ接着した内装建材です。
壁・天井の仕上げ材や扉・造作家具の面材として幅広い建物へ採用されています。
突板化粧板が多くの現場へ採用される理由は、以下のメリットにあります。
- 表面は天然木なので、無垢材と同様にナチュラルな見た目になる。
- 材料の軽量化を実現でき、施工効率性アップにつながる。
- 温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
- 希少価値があり高価な材料でも、無垢材より木材量を減らせるため、安価で安定して材料を入手しやすい。
- 原木1本から取れる突板面積は無垢材を板材にするよりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
- 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる変色も抑えられる。
- 基材によっては防火材料認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすく、対象範囲とそうでない部分の仕上げを揃えられる。
※突板化粧板については天然木にこだわるなら突板練付化粧板。メラミン化粧板・オレフィン化粧板・プリント化粧板との違いは?をご覧ください。
“恩加島木材工業”は、1947年創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使い、良質でバラエティに富んだ突板化粧板を作り続けてきました。
● 重さや木割れ、高いコストの問題をクリアした「不燃突板複合板(不燃ボード)」
● 組み立てた状態で認定済みの現場作業を削減できる「準不燃リブパネル」
● 穴あけの状態で認定済みの現場作業を削減できる「不燃有孔ボード」
● 不燃・MDFから選べる表面に特殊加工を施した高意匠化粧板「天然木練付テクスチャーボード」
● 曲面にも対応できる不燃認定取得済みの「天然木練付不燃突板シート」
着色塗装だけではなく特殊塗装も全て自社工場で行うため、オリジナル色での着色ペイントなどデザインイメージや施工場所に合わせた建材も提供できます。
「市販の建材では思い通りのデザインを表現できない」「内装制限の対象範囲とそうでない部分のデザインを揃えたい」という方はぜひ恩加島木材の製品をご検討ください。
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まとめ
学校は特殊建築物の中でも数少ない内装制限の対象外となる建物です。
ただし、場所によっては内装制限の対象となり、壁・天井の材料選定に注意しなくてはいけません。
学校の内装木質化を検討している方や、内装制限の対象範囲とそうでない部分を統一感のあるデザインにしたい方は、ぜひ恩加島木材の突板化粧板をご採用ください。
非不燃と同じ見た目を実現できる不燃・難燃認定取得済みの製品を多く取り扱っています。
「思い通りのデザインを実現したい」「環境に配慮した建物にしたい」という方のご相談をお待ちしております。