【木の内装】家だけではなく様々な建築物に採用するメリット・デメリット
近年、住宅だけではなく公共施設・商業施設でも「内装の木質化」が進んでいます。
しかし、木を内装に取り入れる“本当の”メリットとデメリットについてはあまり知られていません。
そこで今回は“木の内装”の特徴とメリット・デメリットを紹介します。
設計プランを成功させるポイントや環境配慮型建築の重要性も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
●“木の内装”には、コスト面や施工面におけるデメリットもあるため、材料選定の際には注意が必要です。
● 恩加島木材は国内外から産地にこだわった良質な突板を仕入れ、高品質で施工性・デザイン性の高い木質内装建材を製造販売しています。
Contents
“木の内装”とは
“木の内装”、いわゆる内装の木質化とは、建物の新築・改修に伴い、内装仕上げに木質建材を用いる設計手法を指します。
混同されがちなキーワードに「木造化」がありますが、こちらは主要構造部(※)に木材を使うことを指すため、内装の木質化と本質は異なります。
※主要構造部:建築基準法第2条5号では「壁・柱・床・梁・屋根・階段」と定義
ただし、2025年の建築基準法改正によって防火規定の対象となる大規模建築物においても、柱や梁などの木部を“表し(あらわし)”で表現するハードルが低くなったことから、今後はより一層“木の内装”を取り入れる事例が増えると期待されています。
※2025年建築基準法改正については「【2025年建築基準法改正】重要ポイントを簡単まとめ|構造計算・リフォーム・木造化と防火規定」をご覧ください。
“木の内装”に取り入れる主な建築材料は以下の通りです。
- 無垢フローリング材
- 複合フローリング材(突板・挽板を用いたもの)
- 無垢材を用いた内装ドア・収納扉
- 突板化粧板を用いた内装ドア・収納扉
- 天井・壁の仕上げに用いる羽目板
- 天井・壁の仕上げに用いる突板化粧板
これらの材料は、住宅だけではなく学校・幼稚園や保育園・図書館・病院・店舗・ホテルなど、多種多様な建築物の内装材として用いられています。(参考:林野庁|内装木質化した 建物事例とその効果)
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“木の内装”をプランに取り入れるメリット
“木の内装”を取り入れることで、快適性や環境面、経済性においてメリットがもたらされます。
癒し・リラックス効果がある
木材に含まれるフィトンチッドなどの香り成分は、癒し・リラックス効果があると言われています。
フィトンチッドによって、人体に「血圧下降・脈拍安定・ストレス物質コルチゾールの減少」をもたらすという実験結果もあるほどです。(参考:森林・林業学習館|木の癒し効果)
健康面での効果がある
血圧加工や脈拍安定はリラックス効果だけではなく健康面でのメリットももたらします。
また、木材の香り成分が人体の免疫系への働きかけるというデータもあり、木に囲まれた環境では不眠症になりにくいとされていることから、住宅に加えてホテルでも木を取り入れた内装デザインは少なくありません。(参考:国立研究開発法人森林総合研究所|木のぬくもりあふれる寝室で良い眠りを ―木材・木質の内装や家具が多い寝室では不眠症の疑いが少ない)
調湿効果がある
木は伐採されて製材された後も空気中の水分(湿気)を吸収・放出する調湿性能をもちます。
そのため、木をふんだんに用いた内装は、空間の湿度を安定させて過度な湿潤や乾燥を防ぐことができるのです。
適度な湿度を保てると、空中に漂う細菌(病原菌やカビ菌)の繁殖を抑制できるため、建物の長寿命化や利用者の健康につながります。
消臭・抗菌効果がある
木材にはアンモニアなどの悪臭成分を吸着する性能があります。
特に杉は含まれるタンニンによって消臭効果が高く、含まれる精油や抽出物には黄色ブドウ球菌への抗菌活性が明らかになっていることから、トイレや浴室、病院・高齢者施設などの壁・天井仕上げ材に木材を採用する事例は少なくありません。(参考:林野庁|木材・木造建築物の環境への効果)
吸音・吸光効果がある
木材には反射音や紫外線を吸収する性能があるため、建物利用者の目や耳の負担を軽減できる効果があります。
木材における紫外線の反射率はおよそ15%程度なので、目に与える刺激を大幅に軽減できるのです。
また、木材を内装材に用いた音楽ホールや図書館は、音の残響時間が短いことも分かっています。(引用:林野庁|木材は人にやさしい)
怪我のリスクを減らす効果がある
木材の細胞には無数の空気胞を含んでおり、コンクリートやビニール系内装材よりも衝撃吸収力が高いため、ぶつかったり転倒したりした場合の怪我リスクを軽減できます。(引用:林野庁|木材は人にやさしい)
また、無塗装のフローリングは素足に吸い付くような感覚があり、滑りにくい点もポイントです。
脱炭素化など環境問題解決につながる
木材の積極的活用は、脱炭素・カーボンニュートラルな社会実現に大きく貢献できます。
その理由は、木材・森林の持つポテンシャルにあります。
- 木材は鋼材・コンクリートと比べると、製造・施工・廃棄におけるCO2排出量やエネルギー消費量が少ない
- 「植える・伐採する・使う」の森林サイクルによって、木の成長が促進されて森の活性化につながる
- 木材は3R(※)できる数少ない資源であるため、建物解体後も活用できる
- 木は成長過程で二酸化炭素を吸収し、炭素化合物として固定できる
※3R:リデュース(Reduce=製造時の資源量や廃棄物の発生を少なくする)・リユース(Reuse=使用済製品や部品を繰り返し使用する)、リサイクル(Recycle=廃棄物を再資源化して活用する)の総称
(参考:林野庁|木材利用の動向(1)、林野庁|健全な森林づくり)
地方経済の発展をもたらす
日本は国土の2/3を森林が占めており、そのうち林業目的の人工林は40%にも上ります。
そのため、林業や製材業は地方経済を支える重要な産業です。
ところが、2002年には日本の木材自給率は最低の18.8%を記録し、輸入材への依存が露呈しました。(参考:林野庁|木材供給量及び木材自給率の推移)
この状況を打破すべく、近年は林野庁を筆頭に国産材や地域材の活用を推し進めています。
国産材や地域材の活用は、地域経済の回復や林業の人材不足、放置林の減少など、様々な問題解決につながることに加えて、木材輸送課程のCO2排出量削減ももたらします。
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企業・プロジェクトの社会的な価値や存在意義を高める
木材利用を通じた環境問題解決への貢献は、企業やプロジェクトの社会的な価値や存在意義の向上をもたらします。
近年は企業のSDGsに対する取り組みやCSR(※)が評価に直結することから、木材利用をコンセプトの核とする建築プロジェクトは少なくありません。
※CSR:企業の社会・環境・従業員・投資家などへの社会的責任
企業・プロジェクトのGXを推進できる
GXとはGreen Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称で、化石燃料の消費を抑えて再生可能エネルギー中心の社会構造へ転換する取り組み全般を指します。
その取り組みのうちの一つとして「木材利用」が挙げられます。
2023年には「GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」が施行されました。
今後は企業のGXに対する取り組みが評価や成長に直結するといっても過言ではありません。
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国産材・地域材の利用や、間伐材を活用した人工突板の開発などに取り組んでおりますので、環境配慮型建築の内装デザインを検討中の方は、ぜひ弊社までご相談ください。
“木の内装”をプランへ取り入れる前に知っておくべきデメリット・注意点
木を取り入れた内装にはいくつものメリットがある反面、事前に知っておくべきデメリットや注意点もあります。
経年変色や経年変化が起こり定期的なメンテナンスが必要
木材は、紫外線の影響で経年変色します。
樹種によって濃色化するもの・淡色化するもの様々で、窓際など直射日光が長時間当たる場所は変色が目立つ可能性があるため注意しましょう。
また、直射日光によって表面が劣化してひび割れが発生する事例もあります。
そのため、製品によっては乾燥を防ぐために定期的なオイル塗装が欠かせません。
恩加島木材は突板化粧板の製造から塗装まで全て自社工場で行なっており、特殊塗装やオリジナルカラー調色のご用命も承っております。
キズ・汚れ・シミがつきやすい
木材はコンクリートやタイルよりも表面硬度が低く、キズがつきやすい点は否めません。
また、無塗装品は汚れやシミも気になります。
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コストがかかる
樹種によっては無垢材を使うと材料コストが高くなります。
また、板張り天井や板張り壁は、ビニールクロス張りや塗装よりも1日の施工可能面積が小さいため、コストアップも避けられません。
ウッドショックなどの価格変動の影響を受けやすい点にも注意が必要です。
ご予算に応じて板張りの天井・壁をアクセントとして部分的に採用する事例も少なくありません。
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無垢材は仕上がりのムラが出やすい・量を確保するのが困難
無垢材は同じ樹種でも産地などによって色合いや質感が異なります。
そのため、広い面積を施工する場合には、仕上がりが均一にならない可能性もあるため、中規模以上の建築プロジェクトでは注意が必要です。
無垢材の確保が難しい場合は、同じ木目・色合いの材料をまとまった量揃えやすい突板化粧板がおすすめです。
突板化粧板は天然木材を活かしながらも工業製品なので、無垢材より品質ムラを防げます。
温度や湿度の変化によって変形しやすい
木材の調湿性は空間の湿度を快適に保つ上でメリットとなりますが、木材含水率の変動によって反り・歪み・伸縮・割れなどの変形を引き起こすデメリットがあります。
特に無垢材はその傾向が強く、薄い板材は施工前の保存状態でも変形する可能性があります。
内装制限に注意が必要
内装制限とは、特殊建築物(※)を対象に天井と壁の材料を制限するルールです。
※特殊建築物:不特定多数の人が利用する施設や、火災による危険性と周辺への影響が大きい建築物が該当し、建築基準法第2条1項の2で定められている
対象範囲の壁には「難燃材料・準不燃材料・不燃材料」を使用する必要があります。(建築基準法第35条の2「特殊建築物等の内装」)
そのため、木質建材を特殊建築物の内装へ採用する際は、その不燃性も必ず確認しましょう。
恩加島木材では、天然木不燃化粧板や国内初不燃認定取得済みの突板有孔パネル・リブパネルを製造しております。
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“木の内装”デメリットを解消する鍵は「突板化粧板」にあり
木質建材を用いた内装には、コスト・施工・品質・法令に関するデメリットや注意点があります。
これらを一気に解決できる建築材料が突板化粧板です。
突板とは丸太を0.2〜0.3mmと薄いシート状にスライスした素材で、それを表面材として、合板やMDF、不燃パネルなどの基材に接着することで様々な部位にご利用いただけます。
突板化粧板の魅力は以下の点です。
- 無垢材と同様のナチュラルな見た目と質感に仕上がる。
- 無垢材よりも軽量化を実現でき、施工効率性アップにつながる。
- 無垢材よりも温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
- 希少性があり高価な樹種でも、無垢材より安価で安定して材料を入手しやすい。
- 原木1本から取れる突板面積は無垢板材よりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
- 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる変色も抑えられる。
- 基材によっては防火材料認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすく、対象範囲とそうでない部分の仕上げを揃えられる。
“恩加島木材工業”は、1947年創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使って良質でバラエティに富んだ突板化粧板を作り続けてきました。
突板化粧板の製造から着色塗装・特殊塗装を全て自社工場で行うため、オリジナリティを表現できる木質建材をお探しの方は、ぜひ恩加島木材までご相談ください。
● 豊富な樹種・木目とUV塗装も選べる「突板化粧板」
● 重い・割れやすい・高コスト・ビスが効かないなどの懸念点を解消した「不燃突板複合板」
● 国内初・組み立てた状態で準不燃認定を取得した「リブパネル」
● 国内初・孔を開けた状態で不燃認定を取得した「有孔ボード」
内装制限の対象となる建築物へご採用いただける製品を取り揃えておりますので、建物の設計デザインに木目を取り入れたい方はお気軽に弊社までご相談ください。
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まとめ
“木の内装”には、空間の快適性を高めて地球環境にやさしい建物にできるなどのメリットがあります。
ただし、その一方でコスト面や施工面におけるデメリットもあるため、材料選定の際には注意が必要です。
木を用いた内装のデメリットを解消できる建築材料が「突板化粧板」。
「環境に配慮した建物にしたい」「脱炭素のコンセプトを強く打ち出した設計プランにしたい」という方は、高品質でレパートリー豊富な恩加島木材の突板製品をご検討ください。