建築基準法における“不燃材料”の定義|設計で欠かせないルールと材料選定のコツ
建物を設計デザインする上で重要な決まりが「防火規定」で、特に重要なポイントが不燃材料の選定です。
しかし、「不燃材料の選び方が分からない」「準不燃・難燃材料でも良いか判断できない」という方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は建築基準法における不燃材料の定義や性能、用途、種類から、準不燃・難燃材料との違いまで詳しく解説します。
材料選定のポイントや最新内装建材も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
● 建物の用途や規模、部位によって不燃・準不燃・難燃材料を使い分ける必要があります。
● 恩加島木材は国内外から産地にこだわった良質な突板を仕入れ、高品質で多彩な木質内装建材を製造販売しています。
Contents
建築基準法における不燃材料とは|準不燃材料・難燃材料との違い
不燃材料は、建築基準法で定められている「防火材料」に含まれます。
防火材料は火災時に高温が加わっても、通常の建材より発火しづらい性能が実験によって公的に証明されている材料です。
防火材料の認定を受けるためには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 燃焼しないものであること。
- 防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じないものであること。
- 避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。
(参考:建築基準法第108条の2「不燃性能及びその技術的基準」)
防火材料の種類 | 認定条件 |
---|---|
不燃材料 | 加熱開始後20分以上要件(※)を満たす |
準不燃材料 | 加熱開始後10分以上要件を満たす |
難燃材料 | 加熱開始後5分以上要件を満たす |
防火性能は「不燃>準不燃>難燃材料」で高いため、難燃材料を使用しなくてはいけない部位は不燃・準不燃材料でも良いということです。
ちなみに、防火・耐火・不燃の用語は全て火災に抵抗するためのキーワードですが、建築基準法では以下のように使い分けられています。
- 防火=構造や設備、区画の設計に対して用いる
- 耐火=建築物や構造に対して用いる
- 不燃=材料に対して用いる
不燃材料の用途や施工部位
不燃材料は火災時の延焼を防ぐために必要な部位に用いられる材料です。
建築基準法では「耐火建築物・準耐火建築物の構造体及び外装仕上げ材、看板などの造作物」と「特殊建築物の内装制限範囲における仕上げ材」への使用が義務付けられており、不燃材料・準不燃材料・難燃材料が使い分けられます。
耐火建築物・準耐火建築物の構造体及び外装仕上げ材、看板などの造作物
防火地域などの建物や規模の大きい建物は耐火建築物や準耐火建築物にする必要があります。
耐火建築物及び準耐火建築物は、火災による倒壊や延焼を防止するために主要構造部である壁・柱・床・梁(はり)・屋根・階段に不燃材料を用いて耐火構造・準耐火構造にしなくてはいけません。(参考:建築基準法第2条の9「用語の定義」、建築基準法施行令第107条「耐火性能に関する技術的基準」)
そのため耐火建築物や準耐火建築物は、これまで鉄筋コンクリート(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)、鉄骨造(S造)が主流でしたが、近年は技術革新や建材の発展により、木造事例も増えています。
2025年の建築基準法改正では防火規定が整備され、規模の大きな建築物にも木材を使える範囲がより拡充される予定です。
※建築基準法改正については【2025年建築基準法改正】重要ポイントを簡単まとめ|構造計算・リフォーム・木造化と防火規定をご覧ください。
ちなみに、規模の小さい戸建住宅においても、「延焼のおそれのある部分(※)」の外装仕上げ材には不燃材料を使わなくてはいけません。
※延焼のおそれのある部分:隣地境界線等から、1階は3m以下、2階以上は5m以下の距離にある建築物の部分(参考:建築基準法第2条の6「用語の定義」)
さらに建物本体に関する規定に加えて、防火地域・準防火地域内の建築物へ設置される屋上看板や高さ3mを超える看板、装飾などの造作物にも不燃材料の使用が義務付けられています。(参考:建築基準法第64条「看板等の防火措置」)
特殊建築物の内装制限範囲における仕上げ材
内装制限とは建築基準法第35条の2「特殊建築物等の内装」に基づいた規定で、不特定多数の利用する建築物(特殊建築物)において火災時に内装材が燃えて避難経路を塞いだり有毒ガスによる被害を出さないようにしたりするために設けられています。
以下に該当する範囲には、不燃・準不燃・難燃材のいずれかを使用しなくてはいけません。
- 特殊建築物の「居室及び廊下や階段等の壁・天井」
- 3階建て以上・延べ床面積が500㎡を超える特殊建築物以外における「居室及び廊下や階段等の壁・天井」
- 2階建て・延べ床面積が1,000㎡を超える特殊建築物“以外”における「居室及び廊下や階段等の壁・天井」
- 平屋(1階建て)・延べ床面積が3,000㎡を超える特殊建築物“以外”における「居室及び廊下や階段等の壁・天井」
- 調理室などの火気使用室(主要構造部を耐火構造とした場合は除く)の「壁・天井」
- 無窓居室の「壁・天井」
- 11階建て以上の全建築物における「居室及び廊下や階段等の壁・天井」
- 地下街の「居室及び廊下や階段等の壁・天井」
- 非常用エレベーター乗降ロビー、避難階段の「壁・天井」
防火区画を除き、大半は準不燃材料もしくは難燃材料で規定をクリアできます。
ただし防火材料の性能は「不燃>準不燃>難燃材料」であることから、建材の仕様を不燃・難燃と2グレードだけに限定しているメーカーも少なくありません。
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不燃材料の種類
不燃材料は、告示によって指定されている材料と、実験により防火性能が認められて国土交通大臣より個別認定された材料に分かれます。
告示で定められている不燃材料
- コンクリート
- れんが
- 瓦
- 陶磁器質タイル
- 繊維強化セメント板
- 厚さが3mm以上のガラス繊維混入セメント板
- 厚さが5mm以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板
- 鉄鋼
- アルミニウム
- 金属板
- ガラス
- モルタル
- しっくい
- 石
- 厚さが12mm以上のせっこうボード(ボード用原紙の厚さが0.6mm以下のものに限る。)
- ロックウール
- グラスウール板
(参考:建設省告示第1400号「不燃材料を定める件」)
ちなみに、準不燃材料は建設省告示第1401号「準不燃材料を定める件」、難燃材料は建設省告示第1402号「難燃材料を定める件」にて指定されています。
国土交通大臣より個別認定されている不燃材料
告示にて指定されている不燃材料以外にも、通常の火災と同等の加熱試験によって防火性が証明されて国土交通大臣より個別認定されている製品もあります。(参考:国土交通省|建築基準法に基づく構造方法等の認定)
認定を取得した不燃材料(準防火・難燃材料)には、それぞれ認定番号が付与されます。
防火材料の種類 | 認定番号 |
---|---|
不燃材料 | NM-○○○○ NE-○○○○(外装仕上げ材) |
準不燃材料 | QM-○○○○ QE-○○○○(外部仕上げ材) |
難燃材料 | RM-○○○○ RE-○○○○(外部仕上げ材) |
● 不燃・難燃の個別認定を取得済みの「不燃パネル」
●“国内初”組み立てた状態で準不燃認定を取得した「リブパネル」
●“国内初”孔を開けた状態で不燃認定を取得した「有孔ボード」
防火材料の使用が義務付けられている建物の設計デザインに木目を取り入れたい方は、お気軽に弊社までご相談ください。
不燃・準不燃・難燃材料の選定におけるチェックポイント
不燃材料や準不燃材料、難燃材料を選ぶ際は、4つのポイントを確認しましょう。
建築基準法における仕様制限
内装制限の対象範囲に使用する材料を選ぶ際は、「建物の用途・規模・部位」ごとに不燃・準不燃・難燃材料のどれを使用しなくてはならないかが異なります。
建築規模や特殊建築物の種類、窓の有無、調理室かどうかを問わず、壁・天井どちらも準不燃材料を選べば規定を満たすケースが大半です。
ただし、階数が11以上の建物や地下街などは壁・天井に不燃材料の使用が義務付けられますので注意しましょう。
そのため、内装仕上げ材に全て不燃材料を使用するケースもあります。
施工効率性
内装仕上げ材にはいくつもの種類がありますが、その重さや加工性によって施工効率は大きく変わります。
コストや工期を圧縮するためには、効率的に施工できる材料を選びましょう。
不燃木材よりも軽量化・コストダウンを実現でき、工場で製造するため品質ムラを大幅に抑えられます。
様々な部位へ施工いただけるように様々な厚さ・サイズがございますので、納まりについてもぜひ弊社までお問い合わせください。
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意匠性
材料の防火性に加えて重要なのが、意匠性(デザイン性)です。
ひとつの空間には内装制限の対象になる部位とそうでない部位があり、互いの統一性も重要になります。
40種類以上の樹種を常時取り揃え、板目・柾目や集成柄、ラスティック柄などもお選びいただけます。
環境配慮性
最近、建築プロジェクトに対する「環境配慮性」の重要度が高まっています。
省エネ性能などの環境負荷を抑える工夫に加えて、SDGs実現に向けて積極的に取り組む企業も少なくありません。
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無垢材と同じく天然木の風合いや木目を活かせるのが突板化粧板です。
“恩加島木材工業”は、1947年創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使い、良質でバラエティに富んだ突板化粧板を作り続けてきました。
突板化粧板の魅力は以下の点です。
- 表面は天然木なので、無垢材と同様にナチュラルな見た目になる。
- 材料の軽量化を実現でき、施工効率性アップにつながる。
- 温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
- 希少価値があり高価な材料でも、無垢材より木材量を減らせるため、安価で安定して材料を入手しやすい。
- 原木1本から取れる突板面積は無垢材を板材にするよりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
- 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる変色も抑えられる。
- 基材によっては防火材料認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすく、対象範囲とそうでない部分の仕上げを揃えられる。
● 重さや木割れ、高いコストの問題をクリアした「不燃突板複合板」
● 組み立てた状態で認定済みの現場作業を削減できる「準不燃リブパネル」
● 穴あけの状態で認定済みの現場作業を削減できる「不燃有孔ボード」
着色塗装だけではなく特殊塗装も全て自社工場で行うため、オリジナル色での着色ペイントなどデザインイメージや施工場所に合わせた建材をお探しの方はぜひ恩加島木材の製品をご検討ください。
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まとめ
建築基準法における不燃材料は、建物利用者の安全や周囲への延焼を最小限に抑えるために欠かせない建材です。
建物の用途や規模、施工部位によって不燃・準不燃・難燃材料を使い分ける必要があります。
「天然木の魅力を生かした設計デザインにしたい」「天井・壁と家具やドアをトータルコーディネイトしたい」という方は、ぜひ恩加島木材の突板製品をご検討ください。