建築における「サーキュラーエコノミー」|定義やリサイクルとの違い、具体的な取り組みについて

建築における「サーキュラーエコノミー」|定義やリサイクルとの違い、具体的な取り組みについて

最近、さまざまな産業でキーワードとなっているのが「サーキュラーエコノミー」です。

リサイクルに続いて社会・自然の持続可能性を高めるための取り組みとして注目されています。

そこで今回は「サーキュラーエコノミー」の定義やリサイクル・3Rとの違い、建築分野における重要性や具体的な取り組みについて詳しく解説します。

おすすめの建築材料も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

このコラムのポイント
● サーキュラーエコノミーとは、環境負荷低減と経済成長を両立できる可能性のある取り組みです。

● 建築におけるサーキュラーエコノミーの取り組みにはいくつもの方法があります。

● 恩加島木材は「国産材・地域材・小径材」の活用や低汚染塗装の実施を通じて、環境にやさしい建材づくりに取り組んでおります。


サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーは、日本語に直訳すると「循環型経済」を意味します。

これまでの「製造・利用・廃棄(線型経済=リニアエコノミー)」という一方通行のシステムとは異なり、「製造・利用・廃棄・再利用・・・」という循環経済を生み出す取り組みを指し、持続可能な社会実現に向けて採用される事例は少なくありません。

サーキュラーエコノミーの仕組み
(参考:環境省|循環経済(サーキュラーエコノミー)に向けて


環境省では、サーキュラーエコノミーを以下のように定義しています。

循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すものです。

(引用:環境省|令和3年版環境・循環型社会・生物多様性白書|第2節 循環経済への移行


ポイント
経済産業省では「サーキュラーエコノミー=成長志向の資源循環経済システム」としており、従来の環境保全やSDGsに関する標語とは異なり経済的な視点が盛り込まれています。

経済活動と環境を守る取り組みを並行して考えるため、デカップリング(※)との関係性も深く、欧米ではサーキュラーエコノミーを経営の”軸”としている企業も少なくありません。

※デカップリング:企業や社会の経済成長と環境負荷を切り離して一定の利益や利便性を維持しながらエネルギー消費や自然資源の使用を減らしていく考え方。早くからデカップリングを実行してきたドイツでは、過去20年の間に日本以上の経済成長を続けながら一次エネルギー消費量や温室効果ガス排出量を減らしている。(参考:内閣官房|グリーン成長戦略|「デカップリング」とは何か?


サーキュラーエコノミーの3原則

サーキュラーエコノミーを知る上で欠かせないのが、「3原則」です。

Eliminate「廃棄物・汚染を排除する」

製造・利用の過程において、設計段階から廃棄や汚染を極力取り除き、資源の循環を促します。

これにより線的経済(リニアエコノミー)によって生み出される最終処分ゴミだけではなく、原材料の収集や製造、販売における汚染や廃棄物も無くすことが最終目的です。

Circulate「製品・資材を循環させる」

原材料や使用済みの製品を、質を維持しながら再利用できる状態で循環させます。

それによって、修繕・メンテナンスやリサイクルに対応しない製品を減らし、原材料の保全や省エネにつながります。

Regenerate「自然資本の再生・維持・増幅を目指す」

製品として使用された後も廃棄されることなく、自然資本のプラスマイナスを保ちながら、企業・社会・自然環境が発展することを目指します。

矢印

サーキュラーエコノミーは、これまで経済発展を支えてきた「大量生産・大量消費・大量廃棄」をやめ、資源の使用・消費・廃棄物を抑えながらサービスや社会貢献などの付加価値を提供する経済活動です。


海外・日本の動向

環境保全先進国であるEU諸国では、2015年にサーキュラーエコノミーを提唱し、「第一次循環経済行動計画18」を発表しました。

その中では、生産・消費・廃棄物管理に加えて、二次原材料市場までのライフサイクル全体に関連する法令の見直しが盛り込まれています。

EU全体の取り組みに加えて、国別・自治体別で循環経済実現に向けたロードマップを作成するところもあるほど、高い意識を持って取り組まれているのが実情です。

アメリカでもサーキュラーエコノミーの動きは活発化しており、2021年発表の「国家リサイクル戦略29」では廃棄物のリサイクル化を推めるとともに、循環経済の確立にも言及しています。

実際に、AppleやMicrosoftなどグローバルに活動している企業は、顧客・社会・金融機関などからの要請によって、サーキュラーエコノミーを率先して実行しています。

(参考:経済産業省|成長志向型の資源自律経済戦略


ポイント
アジア諸国でもサーキュラーエコノミーへの移行が進んでおり、ASEANが2021年に発表した「循環経済を推進する枠組み33」では、循環経済の実現は最優先事項としています。

日本においては、2021年に循環経済の取組の加速化に向けた官民連携による「循環経済パートナーシップ」が発足され、随時リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ移行する企業は少なくありません。




サーキュラーエコノミーとリサイクル・3Rの違い

サーキュラーエコノミーとリサイクル・3Rの違い

サーキュラーエコノミーと似たような意味を持つ用語として「リサイクル」や「3R(リデュース・リサイクル・リユース)」があります。

どれも環境保全に関係する言葉ですが、それぞれ少々意味やニュアンスは異なります。

サーキュラーエコノミー

設計段階から環境負荷を減らすことをコンセプトとし、経済的な成長も見込んだシステムで、そもそも廃棄物を出さないことを目的としています。

「ゴミ・汚染物質を出さないことが前提の取り組み」

リサイクル
3R

発生した廃棄物を再利用によって解決する仕組み単体を指します。

「ゴミがある程度出ることは許容し、そこから最終廃棄量を減らす取り組み


ポイント
サーキュラーエコノミーは、原材料を抑制してストック資源を活用しながら製品・サービスに付加価値をつける“積極的な経済活動”であるのに対して、リサイクル・3Rは発生廃棄物を抑制する“受け身の取り組み”であり、循環経済の一部とされています。


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建築における「サーキュラーエコノミー」の導入メリットと必要性

建築における「サーキュラーエコノミー」の導入メリットと必要性

これまでのリニアエコノミーによって社会は大きな経済発展・技術向上を遂げましたが、その皺寄せが地球環境の汚染・破壊などの危機的状況を招いているとされています。

特に多くの資源を使って多量のエネルギーを消費する建築業界の与える影響は大きく、サーキュラーエコノミーの導入が急務です。

では、建築・建設業界においてサーキュラーエコノミーを導入するメリットを紹介します。

環境負荷の低減

日本において建築・建設や建物運用において排出される二酸化炭素量は、全体のおよそ1/3にも上ります。

そのため、建築分野のサーキュラーエコノミー移行は地球温暖化対策として重要です。

具体的には、建設資材の製造における化石燃料によるエネルギー消費量とCO2排出量削減によって環境負荷を低減できるとされています。

資源コストの削減

原材料を最小限に抑えるサーキュラーエコノミーは、廃棄物の発生を前提としているリサイクルや3Rの考え方と比べて投資コストを削減できます。

建築業界では木材や鋼材の価格高騰が現場コストを圧迫している現状は否めません。

そのため、サーキュラーエコノミーへ移行する際の短期的コスト発生という懸念点はあるものの、長期的視点ではサーキュラーエコノミーへ移行する価値があるとされています。

様々な制約リスク回避

建築資材や原材料の需要は経済成長とともに高まっており、近い将来枯渇することが予測されています。

供給量が減ると、その分価格の高騰は避けられません。

また、ウッドショックの際には木材の価格高騰に加えて納期遅延や入手困難も起こっています。

国土の狭い日本においては「バーゼル条約」によって有害廃棄物を他国へ移動できない点も将来大きな問題になる可能性もあるでしょう。

材料を減らすことで、これらのリスク回避につながります。

CSR実現やSDGsへの取り組みによる企業イメージ向上・受注拡大

環境省の試算によると、サーキュラーエコノミーがもたらす経済効果は2030年までに80兆円以上にも拡大すると予測されています。

もはや企業の成長において、環境配慮は欠かせません。

CSR(企業の社会的責任)やSDGsへの取り組みが入札やコンペの際に評価される事例も増えています。

そのため、サーキュラーエコノミー移行によって利益向上や販路拡大も期待できます。



建築業界における具体的な方法

GXと建築の関連性

サーキュラーエコノミーの手法は業界・分野によって異なり、建築・建設業界では主に以下の取り組みが進められています。

既存建物の再利用

既存建物をリノベーション・コンバージョンして、社会のニーズにあった形に対応させて持続可能性を高めます。

新築建物の高耐久化・長寿命化

高耐久な建材・工法の採用とメンテナンスの容易性を兼ね備えた建物は、長期間使い続けられて建て替えに伴うエネルギーや資源の消費を抑えられます。

解体材の回収効率化・再利用・再資源化

大手ゼネコンでは鋼材メーカーなどと協力して解体材の回収フローを構築し、建材リサイクル率を高める取り組みを実施しています。

BIM/CIM利用

建築・建設分野における生産性向上を実現するためにICT活用システムであるBIM/CIMを用いて、設計施工の効率化や省エネ計算の高性能化を目指しています。

中大規模建築物の木造・木質化

森林伐採はサーキュラーエコノミーと相反するイメージがあるかもしれませんが、適度な伐採・木材利用は森の循環を促して、活性化をもたらします。

また、RC造やS造などと比べて資材製造・建築・解体における消費エネルギー量が少ない点もポイントです。

※詳しくは「今“内装の木質化”が注目されている訳とは? その効果や取り入れるべき建築物について徹底解説」をご覧ください。

未利用資源の活用

従来の資材原料からこれまで使われず無駄になっていた原材料へ移行する取り組みも実施されています。

※ぜひ「なぜ“放置林”が増加している?原因と解決策・活用方法を解説」も併せてご覧ください。


ポイント
“恩加島木材”では、「建築物の木質化」「未利用資源の活用」に取り組み、SDGs実現に向けて努めております。



国産材・小径材利用に取り組む恩加島木材の「突板化粧板」

国産材・小径材利用に取り組む恩加島木材の「突板化粧板」

突板化粧板とは、天然木を0.2〜0.3mm程度に薄くスライスした突板(つきいた)を表面材に用いた仕上げ用パネル材です。

無垢材と比べて、以下のようなメリットがあります。

  • 無垢材よりも温度や湿度の変化による変形リスクが低い
  • 無垢材よりも薄く、軽くしても形状や品質を維持できる
  • 無垢材よりも希少な樹種や高価な樹種でもコストを抑えられる
  • 無垢材よりも広い面積で木目や色合いを揃えられる
  • 基材の厚さや材質を変えると、カウンター材とフローリング材・天井材・壁材・家具の面材・内装ドアのデザインを揃えられる
  • 現場では対応できない表面加工(UV塗装・日焼け防止塗装など)のオプションを追加できる


私たち“恩加島木材工業”は、1947年創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使い良質でバラエティに富んだ建材を開発・製造し続けてきました。

ポイント
運輸における消費エネルギー量やCO2排出量削減をもたらす「国産材・地域材の活用」や、建材に加工しにくくあまり活用されてこなかった「小径材の利用(人工突板の開発製造)」に取り組み、環境配慮建築実現をサポートしております。


突板の常備在庫は40以上の樹種およそ1000束に上り、その豊富なストックから仕様やご要望に応じて一枚一枚丁寧に選定し、低汚染かつ高耐久なUV塗装などの特殊塗装も全て自社工場で対応しております。

「設計デザインのイメージにフィットする内装材が見つからない」という方は、お気軽に恩加島木材までご相談ください。

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まとめ

サーキュレーターエコノミーとは、新たな資源を極力使わず環境負荷を減らしながら経済活動を継続する仕組みです。

建築・建設分野においても、様々な取り組みが行われています。

しかし、業務フローの大きな改革を実施することが難しいと感じている企業様も多いでしょう。

その場合は、まず建築材料の選定から検討してみるのがおすすめです。

恩加島木材は高品質な「突板化粧板」を製造販売するメーカーです

国産材・地域材や使われず無駄になっている小径材を活用し、意匠性の高い製品を提供しております。

低汚染かつ高耐久なUV塗装も自社工場で対応しておりますので、「天然木の魅力を生かした設計デザインにしたい」「木目を取り入れてトータルコーディネイトしたい」「塗装にまでこだわりたい」という方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。