【グラフで見る】日本の“森林・林業”が抱える問題と今後の課題や対策について解説
日本の「木材自給率」はかつて80%を超えており、森林資源は確実に活用されていました。
ところが昨今、森林や林業に関する問題が浮き彫りになっています。
日頃、街で生活しているとそれをあまり実感していない方も少なくないはずです。
しかし、日本の森林・林業が衰退すると、私たちの生活へ影響があります。
そこで、今回は「日本の森林・林業」が抱えている問題点とその対策を紹介します。
“木の魅力”を生かした設計デザインを検討している方は、是非参考にしてください。
● 森林・林業に関する問題を解決するためには、建築・建設業界の取り組みが重要になります。
● 恩加島木材は、国内外から産地にこだわった良質な突板を仕入れ、高品質で多彩な突板製品を製造販売しています。
Contents
日本の森林が抱える問題|面積推移と森林破壊・森林伐採の実態
日本は、その国土のおよそ60%を森林が占める“森林大国”です。
都市の発展とともに森林面積は減っているように思われがちですが、実はそうではありません。
上のグラフを見ると、昭和41(1966)年から令和4(2022)年まで、天然林と人工林を合わせた総森林面積は、ほぼ横ばいであることが分かります。
では、なぜ面積が減っていないにもかかわらず、日本の森林は問題を抱えていると言われるのでしょうか。
その理由を紹介します。
森林蓄積の増加=森林伐採の減少
森林面積はそれほど変わっていませんが、問題は「森林蓄積の増加」です。
森林蓄積とは、森林資源の量を指します。
森林面積はここ50年以上ほとんど変わっていませんが、森林蓄積は1941年から2022年でおよそ3倍にまで増加しています。
森林蓄積が増えるということは、それだけ老齢化した木が増えているということです。
人工林・天然林に生えている木の樹齢の構成グラフを見ると、21年を超えているものが大半を占めています。
これは、昭和20〜30年に戦後復旧による建設ラッシュのために打ち出された拡大造林政策によって植林された木々です。(参考:林野庁|我が国の森林整備を巡る歴史)
木造建築の減少や輸入材への依存(木材自給率低下)による国内の森林伐採量減少が原因です。
農林水産省の調査によると、日本国内における木材供給量がピークであった1972年と2022年を比較すると、およそ70%まで減少しています。
樹種によって多少差はあるものの、樹齢11〜20年が最も多くの二酸化炭素を吸収し、樹齢40年を超えるとその量は50〜60%程度まで減少するとされています。
森林衰退は、「地球温暖化防止機能の低下」「土砂災害の増加」「水源かん養機能の低下」をもたらすとされており、森林地域に住む人だけではなく、都心に住む人への影響も無視できません。
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所有者不明林の増加
森林伐採量減少によって、かつては活気のあった林業・製材業が衰退している現実があります。
また、森林の相続をそのままにしているケースも珍しくありません。
それによって、所有者不明林が増えています。
地籍調査による登記簿上の所有者不明林の割合は「28.2%」、所有者は分かっているものの県外など遠くに住んでいる不在村者保有森林面積は「24%」にまでのぼり、経営・管理が行われていない森林は私有林のおよそ2/3「657万ha」まで増加しているのが実態です。(参考:林野庁|森林経営管理法の概要と所有者不明森林への対応)
これらの放置林問題は、日本の森林において重大な問題と言って良いでしょう。
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日本の林業が抱える問題|人手不足・高齢化
日本の森林が抱える問題は、環境面にかかわるものだけではありません。
林業の抱える問題や課題も日本の経済に大きな影響をおよぼします。
林業(および製材業)が産出する額は、1971年の9.8兆円から2009年の1.8兆円まで82%も減少しました。
その後、日本の国産材利用促進の取り組みが功を奏し、2022年には3.6兆円まで回復しましたが、まだまだ全盛期と比べると少ないのが現状です。
林業従事者の人手不足・高齢化
林業の衰退に伴い、林業従事者の人材不足と高齢化が深刻です。
このままでは、さらに森林経営や管理が難しくなり、さらなる衰退を招きかねません。
上のグラフを見るとお分かりの通り、従事者の数は1980年から2022年でおよそ70%減少しており、高齢者率は25%まで上昇しています。
高齢化は日本が世界に誇る高い林業技術の継承も妨げることが危惧されているため、政府は「緑の雇用」事業を実施するなどして、林業事業者への雇用確保や若者の林業への就業をサポートしています。
DX化の遅れ
林業の人材不足を解決するためには、時間が必要です。
しかし、林業の活性化は木材利用を促進する上でもとても重要とされています。
そこで政府が取り組んでいるのが林業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化、スマート林業の推進です。
- 【森林クラウドの導入】
森林簿や森林基本図等の情報をデジタル化して、自治体や国が一括管理できる仕組みづくり - 【レーザ計測の導入】
森林の計測に係る人員や時間を短縮し、迅速にデータ解析や森林蓄積、樹木の状態を把握するための仕組みづくり - 【ICTによる生産管理】
都道府県がレーザー計測によって得た情報をクラウド管理し、アプリによる生産管理を統一化できる仕組みづくり
これらの取り組みによって、人員減少による弊害をカバーすることが目的です。
それを解決に導くには、「建築・建設業界」の取り組みが鍵を握っています。
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森林の“持続可能性”を高めるための対策
日本の森林、ひいては林業・製材業を守るためには、建築・建設業界が取り組むべき課題があります。
建物の木造化・内装木質化
住宅だけではなく、中規模以上の建物についても“木造化・内装木質化”が進んでいます。
これまで法的な制限がありましたが、2025年には建築基準法が大きく改正され、その実現性が高まります。
建物を木造化・内装木質化することは、地球環境保護というメリットだけではなく、企業・プロジェクトのCSRや企業イメージ向上も期待できるでしょう。
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国産材・地域材(地産材)の積極的利用
ただ建築に木材を使うだけではなく、その産地にもこだわることが重要です。
日本の木材自給率は2022年で「40.7%」ですが、1960年代までは60%を超えていました。(参考:林野庁|木材供給量及び木材自給率の推移)
この木材自給率低下が森林伐採量や林業産出額の減少をもたらしていると言って間違いではないでしょう。
木材自給率を上げるためには、木材使用量の多い建築・建設業界が意識を変える必要があります。
国産材・地域材(地産材)を積極的に活用することで、木材自給率上昇だけではなく、その土地に愛される建物になるメリットも期待できます。
都道府県ごとに県産材(都産材)利用に対して補助金を出しているところもありますので、ぜひ事前に詳細をご確認ください。
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「内装の木質化」や「国産材・地域材(地産材)利用」を設計デザインへ取り入れたい方は、お気軽にご相談ください。
恩加島木材の“天然木突板化粧合板”
突板化粧板とは、天然木を0.2~0.3mm程度のシート状にスライスした“突板”を合板などに接着した内装建材です。
● 材料の軽量化を実現でき、施工効率性アップにつながる。
● 温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
● 希少価値があり高価な材料でも、無垢材より木材量を減らせるため、安価な上に、安定して材料を入手しやすい。
● 樹木1本から取れる突板面積は、無垢材を板材にするよりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
● 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる変色も抑えられる。
● 貼り合わせる基材種類によっては、不燃・難燃認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすい。
無垢材の風合いを活かしながらも、コスト面・性能面のメリットをプラスした内装材こそ「突板化粧板」です。
希少価値のある高価な木材や、変形リスクのある木材、産地にこだわった木材を使いたい場合でも、突板化粧板は無垢材よりもコストを抑えられ、施工性やムラのない品質を担保できます。
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まとめ
日本の森林・林業は、貴重な資源が活用されていないという大きな問題を抱えています。
森林資源が使われないと、自然環境が衰退し、地球環境の保全効果や地方経済の活性化が遠のいてしまうリスクは避けられません。
建築の木造化や内装木質化は、その問題解決の大きな糸口と言って良いでしょう。
そこでおすすめなのが、「突板化粧板」です。
天然木の風合いを表現できる上に、無垢材よりもリーズナブルで、施工性や品質が安定している点がメリットです。
「統一性のある洗練されたデザインを実現させたい」「コストの高い樹種を採用したい」とお考えの方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。
当社では、建築現場の効率性アップと地球環境保全を目的に、以下の取り組みを行っています。