【木材のプロが解説】建築木材の種類・特徴や材料選びのポイント、補助金についても

“早材”と“晩材”の違い|年輪・木目が生まれるメカニズムを木材のプロが解説

建築資材の中でも、構造体から内装仕上げ、家具に至るまで幅広い部分に用いられる「木材」。

そんな建築用木材にも色々な種類があり、特徴や用途も異なります。

そこで今回は、「建築用木材」の種類や特徴を詳しく解説します。

木材利用に関する補助制度も紹介しますので、“木を活かした”設計デザインをご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

このコラムのポイント
● 建築へ木材を取り入れることで、環境面・快適面・意匠面においてメリットを得られます。

● 建築木材にはいくつかの種類がありそれぞれ特徴が異なりますので、適材適所に使い分けることが重要です。

● 恩加島木材は、産地にこだわった良質な突板を用いて、内装制限の対象部位にもご採用いただける高品質で多彩な突板製品を提供しています。



建築に木材を使うメリット

早材と晩材とは?読み方と見分け方

2021年に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」、通称“木材利用促進法”が改正され、公共施設だけではなく民間施設へも木材利用が進められるようになりました。

※木材利用促進法については、「“木材利用促進法”は公共施設だけではなく民間施設にも。 概略から木材利用のメリット・補助金まで詳しく解説」をご覧ください。

木材利用が促進されると、日本の森林資源を有効活用できるだけではなく、幾つものメリットがもたらされます。

  • 木材利用が進むと、森林サイクル(植林・間伐・伐採・利用)が活発になり、森林が成長に良好な状態となる
  • 森林が活性化すると、木々の成長過程で多くのCO2を吸収するため、地球温暖化防止につながる
  • 森林地域の雇用を生み出し、地方経済が活性化する
  • 木材は他の建材よりもライフサイクルCO2の排出量と加工・建設時の消費エネルギー料が少ない
  • 廃材を燃料や肥料に3R(リサイクル・リユース・リデュース)できるため、SDGsな社会実現に効果的
  • 火災時など加熱を受けても、強度の低下スピードが緩やか
  • 光の反射率が低いため、内装に使うと目に負担を軽減できる
  • 程よい硬さにより、体への負担や怪我のリスクを軽減できる
  • 調湿機能があるため、内装に使うと快適な室内環境を作りやすい
  • 木の香りによって、鎮静効果・リラックス効果や集中力アップを期待できる
  • 色褪せや濃色化、ツヤなどの経年変化によって、建物への愛着感が湧く


このように、建築へ木材を利用することで、社会面・環境面・心理面におけるメリットがあるのです。

そのため、戸建住宅などの小規模建築物だけではなく、中規模以上の木造化・木質化が進んでいます。

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建築に木材を使うデメリット

早材と晩材の違い|密度・硬さ・仮道管・経年変化

地球環境や地方経済、建物利用者へメリットをもたらす木材ですが、設計・施工する上で知っておかなくてはいけないデメリットもあります。

  • 天然素材なので、品質や精度にムラがある
  • 伸縮や反り、ねじれなどの変形リスクがある
  • 経年変化を防げない
  • カラーや木目などの見た目が不均一
  • 設計や施工、材料選びに知識や技術が必要
  • 工業製品よりも社会情勢によって価格や流通量が変動しやすい


木材は、樹種や育った地域などによって品質が異なり、さらに伐採された後も乾燥環境や保管状態、施工場所など様々な要因によって、変形・変質するものです。

そのため、設計デザインする際は、それらも踏まえたプランニングが必要になります。

ポイント
設計デザインへ建築木材を採用する場合は、木の特性だけではなく、「無垢材・挽板・突板」など、木質建材の種類を知り、それらを使い分けることも重要です。



建築用木材の種類・用途・特徴一覧|無垢材・CLT・突板・挽板

早材・晩材のコントラストを生かした施工性の高い“突板化粧板”

建築用木材は、主に以下の種類に分けられます。

  • 無垢材
  • 直交集成板(CLT)
  • 挽板化粧板
  • 突板化粧板


では、それぞれの特徴を紹介します。

無垢材

無垢材とは、天然木を構造材・内装材へ裁断加工した建築材料です。

触り心地が柔らかく重厚感があり、木の香りや調湿作用もそのまま活かせます。

木造建築の柱・梁など構造体や、フローリング材など内装仕上げ材、家具の材料など、用途は様々です。

ただし、温度や湿度の影響を受けやすく、木目に沿って割れたり変形したりするリスクに注意しましょう。

また、樹種によっては硬く重いため、加工や施工の効率が悪くなる可能性もあります。

そのため、材料を選ぶ際には、含水率や樹種を踏まえた検討が必要です。

直交集成板(CLT)

CLTとは、Cross Laminated Timber(直交集成板)の略称で、挽板の繊維が直行するように積層圧着した建築材料です。

CLTとは
(引用:一般社団法人日本CLT協会


構造材、土木材、内装材、家具の材料などに使われます。

無垢材の欠点である湿度変化による伸縮を軽減できる点がメリットです。

構造材や土木用材、家具など幅広い用途に使われます。

挽板化粧板

天然木を2~3mmの板状に切り出したもので、それを合板などの基材へ貼り合わせたものが挽板化粧板です。

主に家具の材料や壁材、天井材に使われますが、基材を厚くするとフローリングにもなります。

見た目は無垢材とあまり変わりませんが、変形リスクを抑えられる点がメリットです。

ただし、100%変形しないという訳ではなく、細かい加工も困難な点には注意しましょう。

突板化粧板

突板は、天然木を0.2~0.3mm程度のシート状にスライスしたもので、それを合板などの基材へ貼り合わせたものが突板化粧板です。

無垢材の層は極薄なので、触り心地は硬めです。

ただし、その分軽量で施工効率が高いため、主に内装仕上げ材や家具の材料として用いられます。

また、無垢材・CLT・挽板化粧板よりも伸縮や反りのリスクが少なく、細かい加工や曲線デザインの表現も可能です。

ただし、表面材が薄いため、擦り傷を付きにくくするための表面保護塗装を施されている商品を選びましょう。

ポイント
無垢材・CLT・挽板化粧板のデメリットを解消できる建築用木質建材が「突板化粧板」です。


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突板・挽板・無垢材それぞれの違いとは?どれがおすすめ?特性から選び方まで徹底解説


大規模建築物“木造化・木質化”の背景と歴史

大規模建築物“木造化・木質化”の背景と歴史

木造は日本で古くから伝わる建築構造でしたが、1900年代初頭以降は、近代建築において、大型建築物は鉄骨造や鉄筋コンクリート造へと移り変わっていきました。

その後、1919年の市街地建築物法制定(※)によって、木造で建てられる建物の範囲が大幅に狭まり、木造大規模建築物は一気に減ったのです。

※建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低基準を定めて、人々の生命や財産を保護することを目的とした法律

ところが、その後、建築材や工法などの進化に伴い、徐々に中規模以上の建築物においても木造化が復活し始めました。

1987年建築基準法改正で大断面集成材による大規模木造建築が可能になる。
1988年「ふるさと創生1億円事業」発足に伴い、地方都市を中心に木造大型建築物のプロジェクトが増える。
2010年「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、第二次世界大戦後に全国で植林された森林資源の活用が促され始める。
公共建築物の木造率(床面積基準)は8.3%(2010年)から13.8%(2020年)に上昇
2021年「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」へ改定され、対象を公共施設だけではなく民間施設まで拡大する。


これらの背景によって、日本国内の公共施設をはじめとした中規模以上建築物の木造率は緩やかに上昇しています。

中規模以上建築物の木造率
(引用:林野庁|建築分野における木材利用


さらに、2025年には建築基準法の改正によって、大規模建築物における防火規定が整備され、構造体や内装仕上げへ木材を使用できる可能性が高まることになります。

※2025年建築基準法改正については「【2025年建築基準法改正】重要ポイントを簡単まとめ|構造計算・リフォーム・木造化と防火規定」をご覧ください。


木材を使った建築が対象の補助金

木材を使った建築が対象の補助金

日本政府は、「脱炭素社会の実現」と「国産材の活用」を目的に、建築木材の利用に対する補助事業を行なっています。

建築物を木造化・木質化することで受け取れる補助金が多数ありますので、ぜひ設計デザインの際には詳細や要件を確認してください。

ここでは、主なものを紹介します。

「林業・木材産業循環成長対策交付金(木造公共建築物等の整備)」

運営農林水産省(林野庁)
対象建築物学校幼稚園や福祉施設、医療施設、公民館などが対象
(地域材の利用が必須)
補助金額木造化:建設工事費の15%以内
木質化:木質化事業費の1/2以内(ただし、建築工事費の3.75%以内)




「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」

運営環境省
対象建築物学校幼稚園や福祉施設、医療施設、公民館、消防署、警察署、駅などだけではなく、民間非住宅建築物も対象
(木質材料を一定量以上使用した場合に優先採択枠を設けられるが、外皮性能基準への適合や設計一次エネルギー消費量の削減などの要件を満たす必要あり)
補助金額補助対象経費の2/3~1/4



「建築用木材供給・利用強化対策のうち森林を活かす都市の木造化等促進総合対策事業」

運営農林水産省(林野庁)
対象建築物学校幼稚園や福祉施設、医療施設、公民館、消防署、警察署、駅などだけではなく、民間非住宅建築物や集合住宅、戸建住宅も対象
(中層建築物を重点的に、木質建材を採用して性能を実証すること)
補助金額木質耐火部材、JAS構造材、内装材、木製サッシの調達費等への助成や、技術等の開発や再検証・改善費用(定額)と建築費等(3/10以内)への助成



ポイント
上記事業のほかに、県産材(都産・道産・府産材)の利用を促進するために、自治体単位で助成金を支給しているところもありますので、担当部署へご確認ください。



内装木質化におすすめの“突板化粧板”|施工性・コスト・品質安定性・不燃性

突板のメリット・デメリット

恩加島木材は、昭和22年創業以来、国内外から良質な突板を仕入れ、高品質な突板製品を作り続けてきました。

突板化粧板は、天然木を薄くスライスした突板を表面材として、合板などへ圧着した内装用木質建材です。

「突板化粧板」のメリット
● 表面は天然木なので、無垢材と同様にナチュラルな見た目になる。

● 材料の軽量化が実現でき、施工効率性アップにつながる。

● 温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。

● 希少価値があり高価な材料でも、無垢材より木材量を減らせるため、安価な上に、安定して材料を入手しやすい。

● 樹木1本から取れる突板面積は、無垢材を板材にするよりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。

● 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる材料の変色も抑えられる。

● 貼り合わせる基材種類によっては、不燃・難燃認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすい。


弊社の不燃突板複合板は、日本初・大臣認定取得商品です。

内装制限の対象となる部分にも、安心してご選定いただけますので、ぜひ採用をご検討ください。

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突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介


PANESSE(パネッセ)

突板練付化粧板

弊社オリジナルの天然木練付化粧板のシリーズで、基材によって「不燃ボード」「難燃ボード」「MDF化粧合板」「突板シート」「有孔パネル」「テクスチャーボード」と多彩なラインナップをご用意しています。

樹種は40種類以上から選定可能で、国産材・地産材のご注文も承っておりますので、産地にまでこだわりたい方におすすめです。

▶︎「PANESSE」の詳細はこちらから


リブパネル・ルーバー

リブパネル・ルーバー

弊社では、PANESSEと同じ樹種ラインナップで、最近トレンドのリブパネルやルーバーもご用意しています。

リブパネルは、もちろん天然木練付化粧板に貼り付けた仕様で、あらかじめ工場でパネル組みをしている高精度・省施工型の製品です。

基材は不燃(ダイライト、エースライトなど)やアルミ押出成形品(※ルーバーのみ)からお選びいただけますので、内装制限のある建物へもご採用いただけます。

▶︎「リブパネル・ルーバー」の詳細はこちらから

▶︎「リブパネル」の規格図ダウンロードはこちらから


天然木突板シート

突板シート

木口や細かい部分、曲部には、突板化粧板と同様に天然木突板を用いた「突板シート」をご採用ください。

こちらも、PANESSEの化粧板と同じ樹種をご用意しています。

特殊複合紙の表面に0.2mm厚さの突板を貼り合わせた総厚0.4mmの化粧シートで、板状の材料では対応しきれない部分の施工におすすめです。

国土交通省からの個別認定を取得済みの不燃材料であるため、内装制限のある施設にもお使いいただけます。

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まとめ|建築木材は適材適所に使い分ける

建築木材にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴は異なります。

そのため、各材料のメリットデメリットを知り、予算や用途に合わせて適材適所に使い分けることが重要です。

内装に木質建材を使いたい方におすすめなのが、コスト面・施工面・意匠面でメリットが多い「突板化粧板」です。

美しい木目と施工性、コストパフォーマンス、どれも捨て難いという方は、ぜひ“恩加島木材”の突板化粧板をご検討ください。

内装制限の対象部分にも使える不燃・難燃認定商品も用意しております。

「統一性のある洗練されたデザインを実現させたい」「コストの高い樹種を採用したい」とお考えの方は、まずお気軽にご相談ください。

恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。