「森林伐採=地球温暖化」という“誤解”|関係性や建築ができる対策を解説
昨今、地球温暖化は全世界が解決に向けて取り組んでいる環境問題です。
二酸化炭素排出量削減と合わせて、森林伐採が一因と考えている方も多いでしょう。
ところが、実際はそうとも言い切れません。
そこで、今回は「地球温暖化」と「森林伐採」の関係性や実情、環境問題対策として建築業界ができることを紹介します。
環境に愛されサスティナブルな建物にしたい方は、ぜひ設計デザインの参考にしてください。
● 地球温暖化に歯止めをかけ、サスティナブル建築を実現させるためには、設計デザインにおいて取り組めるポイントを押さえることも重要です。
● 恩加島木材は、環境に配慮し、産地にこだわった良質な突板を用いて、高品質で多彩な突板製品の開発・製造・販売を行っています。
Contents
森林伐採でなぜ地球温暖化になる?原因は?
「地球温暖化」とは、地球を適切な温度に保つ機能を果たす温室効果ガスが必要以上に増えて大気圏内にこもり、太陽から降り注ぐ赤外線によって地表付近の気温が上がってしまう現象です。
本来は、地上から放射される温室効果ガスによって、地表の熱が“適度”に止まるため、動植物の生態環境に適した温度になります。
ところが、温室効果ガス濃度が高まると、効果が必要以上に強くなってしまうのです。
産業革命が起こった18世紀後半から、私たち人間は化石燃料を燃やしてエネルギーを創り出し、技術や経済の発展を遂げてきた歴史があります。
それによって、1700年代から現在に至るまで、待機中の二酸化炭素濃度は40%も増加したとされており、その傾向は近年特に顕著です。
二酸化炭素濃度が上昇している原因は、化石燃料の使用だけではありません。
植物の生育圏が狭まっている点も原因とされています。
樹木は、光合成の過程で二酸化炭素を吸収し、酸素と炭素を作り出して酸素は放出し、炭素は蓄積されます。
そのため、温室効果ガスの一種である二酸化炭素の量を減らしてくれるのです。
森林1ha(樹木約900本)が吸収する二酸化炭素量は年間で約「8.8t」とされています。(参考:林野庁|森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?)
一般家庭で一年間に排出する二酸化炭素量(電気、ガス、灯油の合計)は、2.74tなので、森林の影響がとても大きいことは明白です。(参考:環境省|令和3年度家庭部門のCO2排出実態統計調査 結果の概要(確報値))
そのため、「地球温暖化=森林伐採」とイメージが人々に強く定着しています。
ところが、最近の研究では、全世界における陸上生態系で、1年間におよそ「31億t」もの二酸化炭素を吸収していると推定されています。(参考:国立環境研究所地球システム領域地球環境研究センター|ココが知りたい地球温暖化)
森林面積が減っている現状においても、自然界による影響はそれほど大きくないという説が通説になりつつあるのです。
環境省の資料によると、森林減少等に伴う温室効果ガスの排出量は、世界全体における排出量の約20%程度に過ぎません。(参考:環境省|森林の減少と温暖化)
「地球温暖化=温室効果ガス」の原因は、森林現象だけではなく、化石燃料の使用など、複数の原因が絡み合って進行していると言えるでしょう。
“グラフで見る”森林の面積割合はどのような推移?世界と日本の場合
森林は成長の過程で二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。
そのため、森林面積の割合が増えれば、その分温室効果ガスを減らせるということです。
全世界の森林面積は約40.3億ha、陸地面積のおよそ31%を占めています。(参考:環境省|世界の森林を守るために)
国別に森林率にはかなり差がありますが、日本は世界トップクラスの森林率を誇っています。
ここで注目すべきなのは、全世界における森林面積は、毎年520万ha程度減少し続けているのに対して、日本国内の森林面積はほぼ横ばいという点です。
そのため、一定面積の人工林が守られ続けています。
昨今の政策によって、国産材の利用が回復しているのも要因です。
〈おすすめコラム〉
今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説
国産材が使われない6つの理由。建築が木材自給率アップのためにできることは?
地球温暖化に影響するのは「森林減少」|問題点・打開策
ここで重要なポイントは、地球温暖化の原因は「森林伐採ではなく“森林減少”」という点です。
森林伐採には、森林を管理する上で欠かせない作業も含まれるため、全てがマイナスとは限りません。
一方、森林減少は人為的原因や自然災害による原因によって進行します。
【人為的原因】
- 農地や宅地などへの転用
- 違法伐採の増加
- 伝統的に行われている焼畑農業
- 燃料確保のための大量伐採
【自然災害による原因】
- 気温上昇による森林火災の多発
そのためには、森林伐採をやめるのではなく、法規制や木材を使う業界の意識改革など多面的な取り組みが求められます。
〈おすすめコラム〉
世界の“森林減少”が深刻。原因や実状・建築でできる対策について解説
森林の「間伐・定期伐採」が地球温暖化対策になるというデータも
違法伐採の取り締まりが世界的に進み、森林の伐採量はコントロールされつつありますが、それ以外にも木々を守る方法があります。
それが、森林を定期的に「伐採・間伐」することです。
「木々を守るために伐採する」というのは、どこか矛盾しているように感じるかもしれません。
ところが、適切な伐採・間伐は、森林を活性化させます。
間伐とは、森林の成長に応じて樹木の一部を伐採し、過密となった林内密度を調整する作業です。
(参考:林野庁|間伐とは?)
間伐を行うと、光が地表に届くようになり、下層植生の発達が促進され森林の持つ多面的機能が増進します。
間伐を行わず過密なままにすると、樹木はお互いの成長を阻害し、形質不良になります。
また、残った樹木が健全に成長することにより木材の価値も高まるため、間伐は大変重要な作業となります。
伐採・間伐によって、一時的に二酸化炭素吸収量が低下するものの、樹齢が増えた樹木を放置するのと比べると、長い目で見るとより多くの二酸化炭素が吸収されるのです。
そのため、地球温暖化対策として定期的な“木の入れ替わり”が欠かせません。
ただし、ここで問題となるのが、間伐材の活用方法です。
今までは、バイオマス燃料や木炭、パーティクルボードなどの原料として使われてきたものの、これだけでは林業の利益化が難しく、管理されない森林が増えてしまいました。
そこで、いくつかの建材メーカーは、間伐材を積極的に活用するための技術開発を進めています。
〈おすすめコラム〉
“間伐材の利用”がSDGsのカギを握る?現状の問題点やメリット・デメリットについて解説
地球温暖化対策として“建築”ができること
国土交通省は、建築現場の省エネ化に向けて、以下の取り組みを紹介しています。
- 作業効率の向上
- 定期整備と日常点検の徹底
- 工事照明の工夫
- 省エネ・低燃費型建設機器の使用
これらは、あくまで現場での工夫です。
それ以外にも、設計デザインにおいて地球温暖化を抑える工夫もできます。
木材の積極的な利用(建築の木造化・木質化)
木材を設計デザインへ積極的に取り入れることで、木材需要が増えて森林が継続的に管理され、森林サイクルが生まれます。
政府は、非住宅・中規模以上建築物の木造化や木質化をすすめており、その事例は年々増えているのが現状です。
国内における建築関連の木材需要量は、製紙用パルプやチップ用と並んで多いため、建築の木造化・木質化は地球温暖化抑制へ大きな効果を生み出すことが期待されています。(参考:内閣府|木材産業の現状と課題)
〈おすすめコラム〉
今“内装の木質化”が注目されている訳とは? その効果や取り入れるべき建築物について徹底解説
合法的に伐採された木材の利用(違法伐採の撲滅)
違法伐採によって、森林が無秩序に乱伐されると、植林スピードとのバランスが崩れ、森林破壊、ひいては森林減少をもたらします。
国際森林研究機関連合(IUFRO)の調査によると、丸太と製材にかかわる違法伐採木材の取引額は、なんと世界で63億ドルにまで上るというデータもあるほど、違法伐採撲滅は重要な取り組みです。
東南アジアや南米を中心に違法伐採問題が深刻化しているため、建築材料を選ぶ際には、その合法性もチェックしましょう。
〈おすすめコラム〉
“クリーンウッド法”をわかりやすく解説|目的や国産材利用促進との関係性は?
小径木の活用(植林材・間伐材の利用)
木々が建築資材、特に美しい木目が求められる内装材として使えるようになるまでは、樹齢数十年以上かかります。
しかし、そこまで育つまでには長い年月と手間がかかり、直接的な森林の二酸化炭素給料増加にはつながりません。
そこで最近注目されているのが、植林材や間伐材など小径木の活用です。
短いスパンで森林を活性化でき、なおかつ森林経営の維持をサポートできます。
〈おすすめコラム〉
“人工突板”は天然木由来の建材。基礎知識やウッドショックとの関連性について解説
国産材・地産材の利用
国産材やさらに地域を限定した地産材を活用することで、材料運搬時の消費エネルギー量や二酸化炭素排出量を大幅に削減できます。
〈主なご採用事例〉
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)
金沢サッカー場内装(石川県産材利用)
鳥取県立美術館(鳥取県産材利用)
〈おすすめコラム〉
今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説
環境に配慮した“恩加島木材”の多彩な商品ラインナップ
私たち“恩加島木材”が皆様にご提供しているのは、天然木をスライスした突板を用いた化粧板などの内装建材です。
● 材料の軽量化が実現でき、施工効率性アップにつながる。
● 温度や湿度環境変化による変形リスクが少ない。
● 希少価値があり高価な材料でも、無垢材より木材量を減らせるため、安価な上に、安定して材料を入手しやすい。
● 樹木1本から取れる突板面積は、無垢材を板材にするよりも広いため、同じ風合いを大量入手しやすい。
● 特殊塗装によって、表面の耐キズ性・耐汚性を高められ、日焼けによる材料の変色も抑えられる。
● 貼り合わせる基材種類によっては、不燃・難燃認定を受けられるため、内装制限のある建築物にも採用しやすい。
住宅はもちろん、内装制限のある商業施設・公共施設にも対応できるよう、不燃材を基材とした商品も取り揃えていますので、建物用途問わずご採用いただけます。
原料となる突板の選定、職人による貼り作業、特殊加工や塗装、在庫管理、出荷作業までの一連を、全て自社工場にて行っている点が特徴です。
1947年に創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使って、良質でバラエティに富んだ内装材を作り続けてきました。
突板の常備在庫はおよそ1000束に上り、その豊富なストックから、仕様やご要望に応じて一枚一枚丁寧に選定しています。
高品質なだけではなく、様々な建物や納まり、デザインを実現できる多彩な商品を取り揃えていますので、ぜひ設計デザインにご採用ください。
PANESSE(パネッセ)
天然木練付化粧板のシリーズで、基材によって「不燃ボード」「難燃ボード」「MDF化粧合板」「突板シート」「有孔パネル」「テクスチャーボード」と多彩なラインナップを実現。
樹種も40種類以上からご選定可能で、産出地を限定した地産材のご注文も承っております。
〈関連コラム〉
恩加島木材の豊富な突板化粧板ラインナップ 厚さと基材の種類を紹介
樹種別の特徴や木目のトレンドは?恩加島木材の人気樹種や選び方のポイントを解説
KDパネル
KDパネルは、台湾・KEDING社製の天然木化粧合板です。
0.5mmの厚単板で木目の立体感を、特殊UV塗装で耐久性と抗菌性能を付与した今までに無い化粧合板。
天然木本来の質感と、メラミン化粧板のような強度・施工性を兼ね備えています。
恩加島木材工業が自信をもって展開する日本初上陸のプロダクトです。
リブパネル・ルーバー
最近トレンドのリブパネルやルーバーも、その他化粧板と同じ樹種で製造しております。
リブパネルは、もちろん天然木練付化粧板に貼り付けた仕様で、あらかじめ工場でパネル組みをしている高精度・省施工型の製品です。
ルーバーも同様で、精度の高い高意匠ルーバーとして人気商品となっています。
基材は木芯・不燃(ダイライト、エースライトなど)からアルミ押出成形品(※ルーバーのみ)まで対応しておりますので、内装制限のある建物にもご採用いただけます。
リブパネルはHPより規格書もダウンロードできますので、是非ご検討ください。
〈関連コラム〉
天然木の風合いを生かした“ルーバー”と“リブパネル” 特徴や不燃対応について徹底解説
詳しくは、納入実績・施工実績・最新トピックスをご覧ください。
〈おすすめコラム〉
突板製品はこうして生まれる。森から現場までのプロセスは?生産工程や恩加島木材の強みを紹介
恩加島木材の豊富な突板化粧板ラインナップ 厚さと基材の種類を紹介
樹種別の特徴や木目のトレンドは?恩加島木材の人気樹種や選び方のポイントを解説
まとめ|地球温暖化対策として木材利用は重要なポイント
地球温暖化の主な原因と思われがちな「森林伐採」ですが、問題は「森林減少」です。
人為的な原因による森林減少を食い止めることで、地球温暖化のスピードを遅くできます。
そのために建築ができることは、現場の省エネ対策だけではありません。
設計デザインにおける材料選定でも、地球温暖化対策に貢献できます。
私たち“恩加島木材”では、植林材・間伐材の活用や国産材利用などを通して、サスティナブル建築実現に向けた取り組みを行っています。
製品は豊富な樹種とレパートリーと、多岐に渡っています。
「統一性のある洗練されたデザインを実現させたい」「コストの高い樹種を採用したい」とお考えの方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。
恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。
随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
〈日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”
建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。
天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。
しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。
- 重い
- 割れやすい
- 高コスト
- ビスが効かない
それらの問題を解決したのが、「恩加島木材の不燃突板複合板」です。
天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは本実加工も可能です。
日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。