“間伐材の利用”がSDGsのカギを握る?現状の問題点やメリット・デメリットについて解説
毎日のように耳にする“SDGs”ですが、実は林業・製材業でもある取り組みが進められています。
それが、「間伐材の利用」です。
間伐材利用と聞くと、薪やペレットなどの燃料利用が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、建築においても利用方法が次々と開発されています。
そこで、今回は「間伐材の利用」についての基礎知識から、消費者にとってのメリット・デメリットまで詳しくお話しします。
「地球環境に配慮した木材を取り入れたい」「SDGsを建築設計に取り入れたい」とお考えの方は、是非参考にしてください。
●まだまだ間伐材利用量は不十分であり、今後は大量に木材を消費する“建築”での利用が期待されています。
●恩加島木材は、環境に配慮しつつ国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。
Contents
日本は国土の2/3を森林が占める“森林大国”
日本は、国土の約2/3(67%)である2,500万ヘクタールほどを森林が占めている“森林大国”です。
他国の森林率を見てみると、アメリカ33%、カナダ35%、中国21%、林業・製材業が盛んなロシアでも20%程度にすぎません。
森林率上位国を見ると、スリナムやガイアナなどが90%以上ではあるものの、これらはあくまで天然森林であり、製材向けに育っている木々ではありません。
一方、日本は森林全体の約40%を占める面積が人工林です。
北海道約3個分にもなる人工林には、建材に適しているスギ・ヒノキが多く生息し、戦後に植えられたそれらの木々が、今まさに利用に適した樹齢を迎えています。
世界の中でも森林資源に恵まれている日本ですが、実はある問題が増えています。
それが、「所有者不明森林の増加」です。
過疎化や少子高齢化が進む中、相続に伴う所有権の移転登記がなされていないことなどにより、森林所有者の一部が不明な森林(共有者不明森林)や森林所有者の全部が不明な森林(所有者不明森林)が生じ、森林を適切に経営管理していく上で支障が生じる状況となっています。
引用:林野庁|森林経営管理制度(森林経営管理法)について
所有者不明の森はなかなか手入れが行き届かず、段々と木々が弱り、地滑りなどを引き起こしてしまいます。
この現状を鑑みて、政府は「森林経営管理制度(手入れの行き届いていない森林を市町村が委託を受け、整備・管理する制度)」や、「森林環境贈与税(国民が森林管理の財源を一部負担する制度)」を整えましたが、未だ森林整備は追いついていないのが現状です。
森林整備に欠かせないのが“間伐”ですが、所有者不明森林を始めとした手入れの行き届いていない森林の多くは、この間伐が行われていません。
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“間伐材利用”が注目される理由は?SDGsとの関係は?
では、なぜ森林の健全な運営・維持には“間伐”が有効なのでしょうか?
適切に間伐を行うことは、以下のようなメリットをもたらします。
- 密集した木々を間引きすることで、森林に満遍なく太陽光が行き届き、多様な生態系を作り出す。
- 成長過程でたくさんの太陽光に当たることで木々が健やかに成長し、健全な森林循環が保たれる。
- 木の根が弱り地滑り災害につながるリスクを抑えられる。
- 地滑りによって川の流れが変わり、海の水質へ悪影響を及ぼすことを防げる。
SDGs17アクションのうち、以下の目標達成に繋がります。
間伐は森林を繁栄させたり維持したりするためには欠かせません。
しかし、林業従事者の高齢化や人手不足、資金不足が原因で全ての人工林で間伐が適切に行われているとは言えないのが現状です。
間伐ができずに森林の“高齢化”が進めば、どんどんと衰退していってしまうことが懸念されます。
今まさに成熟期を迎えている日本の人工林を守るためにも、林業・製材業に関わる企業だけではなく、私たち国民ひとりひとりが森林保全へ意識を向ける必要があるのです。
そこで有効的なのが、「国産材と間伐材の積極的な利用」です。
貴重な森林資源を有効活用するためにも、木材自給率を上げ、さらに間伐材も利用して、林業・製材業を盛り上げなくてはいけません。
〈参考ページ〉
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“間伐材利用”のメリット・デメリットは?
では、間伐材を利用することで得られる具体的なメリットは何でしょうか?
また、消費者にとってデメリットはあるのでしょうか?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット
適切な間伐は、森を健全に維持するために欠かせません。
しかし、ただ間伐材を処分するのでは、経済負荷や環境負荷が大きく、それが原因で手入れができない森林があるのも現状です。
なぜなら、伐採後そのまま森に放置しても、完全に朽ちるまで数十年かかりますし、処分するにも10kgあたり100~300円程度の処分費がかかるからです。
また、間伐にかかる人件費を捻出することが難しいケースも少なくありません。
実際に、日本の人工林は成熟期を迎えているにも関わらず、人手不足・資金不足で伐採が進まず、伐採してもその後再び植林されるケースは3〜4割ほどと言われています。
残念ながら、現在の再造林費用は伐採材(立木)販売収入を上回っており、植えても赤字になってしまうのが現状です。
森林を維持するためには、間伐材を様々な産業で積極的に利用して、林業・製材業の収入源を増やし、活性化させることが重要な課題です。
間伐材から作られる材木・木製品は、原価コストが抑えられ、消費者にリーズナブルな価格で届くため、林業・製材業従事者以外にもメリットとなります。
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デメリット
間伐材利用は、環境的にも経済的にも大きな意義のある取り組みですが、利用する前に知っておかなくてはいけないデメリットもあります。
まず、間伐材は木が成熟する前に伐採するため、幹は細いものがほとんどで、現在の技術では集積材としてしか使えず、無垢材としては活用できません。
また、まだまだ流通量が少ないため、せっかく間伐材を利用しようとしても必要量を確保できない可能性もあります。
そのため、現時点での主な活用方法は、割り箸・木質ペレットの原料・紙原料などが主です。
そして、日本の私有森林所有形態は、とても分散的で、個人が所有しているものも少なくありません。
そのため、個別に間伐などの森林整備を行うことは非効率で、どうしても作業コストが高くなってしまうのが現状です。
この問題を解決すべく、林野庁では”林業の集約化”を進めており、費用ロス・人材ロスを防ぐ取り組みを行なっています。
“間伐材”の利用量はどのくらい?
環境面・経済面を鑑みて、林野庁では間伐材利用を推し進めています。
しかし、それにも関わらず、その利用量はそれほど増加していません。
その原因は、消費者にそのメリットが周知されていないことにあると言えるでしょう。
また、割り箸やペレットなどの活用方法だけでは、どうしても限界があり、これらの取り組みだけでは劇的に間伐材利用量を増やすことは難しいです。
だからこそ、多くの木材を消費する”建築”の意識改革に期待が寄せられています。
建築における利用事例は?
今後は、”建築”でより多くの間伐材利用を進める必要性がありますが、現時点でも全く利用されていないという訳ではありません。
公共事業を中心に、試験的に間伐材利用が進んでいます。
- 木質フェンスなどエクステリアへの活用(例:間伐材を利用した安全なフェンスの開発と設置)
- 針葉樹バークチップによる舗装(例:一般社団法人 間伐材ウッドチップ舗装協会)
- 間伐材小径木を活用した木造仮設建築の開発(例:大林組|環境配慮型仮設工事事務所「ECOサイトハウス」)
- 配向性ストランドボードの原料への活用(例:エスウッド|ストランドボード)
- 内装材の原料への活用
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恩加島木材の“間伐材利用”に対する取り組み
恩加島木材では、間伐材を積極的に建築デザインに採用していただけるよう、取り組みを行なっています。
- 杉・桧の小径間伐材をバランスよく配置して美しい突板製品へ活用
- 間伐材や短期間で成長する植林樹木を利用した「人工突板」の開発・製造
間伐材のデメリットである幹の細さを解消し、美しい“天然木突板製品”に加工するためには、木の特性を知り尽くした経験と熟練した技術が必要です。
特に注目されているのが、「人工突板」。
私たち“恩加島木材”は、日本国内でも数少ない「人工突板」の開発・製造を進めているメーカーです。
1947年創業以来培った確かな経験と、最先端設備による多彩な加工技術があるからこそ、自信を持ってご提供できる“恩加島木材の突板製品”。
間伐材を建築の設計デザインに取り入れたいとお考えの方は、ぜひ当社製品のご採用をご検討ください。
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恩加島木材の今後の目標
私たち“恩加島木材”は、地球環境や森林維持のために様々な取り組みを行っております。
再生エネルギーの導入
自社工場への太陽光発電システムおよび蓄電池の導入を目指しています。
(2023年、本格導入予定)
持続可能な製品の開発製造
植林木を利用した突板の開発を進めています。
地産材の積極的利用
日本の貴重な資源である“森林”、そして林業・製材業を守るため、原産地を日本国内ならず地域を限定した樹種を積極的に取り扱っています。
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)
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“WOOD COLLECTION 2023”に出展します
“恩加島木材工業”は、2023年1月に開催される「WOOD COLLECTION 2023」に出展します。
このイベントは、国産木材の普及や価値を見出してもらうことを目的とており、日本全国から集まった企業が、木材製品や技術の展示を行います。
「“木”を生かした設計・デザインをしたい」「木製品の最新情報やトレンドを知りたい」という方は、ぜひご来場ください。
〈関連ページ〉
WOOD COLLECTION 2023(公式ページ)
まとめ|間伐材利用で日本の資源を守りましょう
建築の木質化が進む昨今、国産材の利用量も増えていますが、まだまだ林業・製材業が活発であるとは言えません。
日本の大切な資源である“森林”を衰退させないためにも、建築の間伐材利用は大きな課題です。
建材を検討する際には、ぜひ間伐材を使った製品をご検討ください。
そこで“恩加島木材”がおすすめするのが、「突板製品」です。
“恩加島木材”は長年培った経験と知識をもとに、みなさんの設計デザインをお手伝いさせていただいております。
間伐材を用いた突板化粧板以外にも、天然木突板を使った化粧板やフローリング材、ルーバー、有孔ボードなど多岐にわたっているため、空間のトータルコーディネートも可能です。
「環境に配慮した製品を取り入れたい」「統一性のある洗練されたデザインを実現させたい」とお考えの方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。
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恩加島木材工業株式会社|納入実績
〈日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”
建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。
天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。
しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。
- 重い
- 割れやすい
- 高コスト
- ビスが効かない
それらの問題を解決したのが、「恩加島木材の不燃突板複合板」です。
天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは本実加工も可能です。
日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。
恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします
「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?
恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。
随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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