カーボンニュートラルに向けて“建築”ができることは?脱炭素化への取り組みについて解説
毎日のようにメディアで取り上げられている「カーボンニュートラル」。
世界中で今取り組むべき課題として注目されています。
しかし、その本質をまだまだ知らない人も多いでしょう。
そこで、今回は「カーボンニュートラル」や「脱炭素化」についての基礎知識から、“建築”が取り組むべきことについてお話しします。
是非、設計やデザインの参考にしてください。
●建設業界では、二酸化炭素排出量抑制に向けて、様々な取り組みがなされています。
●カーボンニュートラル実現に効果的とされているのが、「木材の利用促進」です。
●恩加島木材は、環境に配慮しつつ国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。
Contents
カーボンニュートラルと脱炭素化に違いはある?
地球温暖化に歯止めをかける方法として、世界的に取り組んでいるのが「カーボンニュートラル」や「脱炭素化」ですが、実はこの2つの意味は若干異なります。
〈カーボンニュートラル〉
二酸化炭素を初めとした“温室効果ガス”の排出量と吸収量を均衡(±ゼロ)にすることを指し、ゼロカーボンやネットゼロと呼ばれることもあります。
排出した二酸化炭素と、森林が吸収する二酸化炭素量を相殺してゼロになることが目標です。
一方、「脱炭素化」はもう少し厳しいニュアンスも含みます。
〈脱炭素化〉
地球温暖化の原因となる“温室効果ガス”の排出量をゼロに抑えることを意味します。
実は、「脱炭素化」という言葉の歴史は浅く、比較的新しいキーワードです。
公の場で初めて使われたのは2015年のパリ協定と言われています。
パリ協定は、1997(平成9)年に京都で開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)にて締結された京都議定書に代わる枠組みとして、2015年12月にフランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されました。
歴史上初めて“世界中すべての国が参加する公平な合意”が実現したことでも注目され、温室効果ガス排出削減に向けて、一丸となって取り組むことが話し合われました。
その中で、最も重要視された課題が「脱炭素化」であり、主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに国連へ提出・更新することが義務付けられたのです。
これにより、世間の注目は一気に高まり、政府だけではなく企業や国民一人一人が「カーボンニュートラルとその先にある脱炭素社会」に向けて動き始めました。
温室効果ガス削減について知る上で、他にも知っておくべきキーワードがあります。
低炭素化
「脱炭素」が一般的に普及する以前、二酸化炭素削減を目指すことを「低炭素化」と呼んでおり、温暖化対策の大きな課題でした。しかし、2015年のパリ協定以降、方針が低炭素から脱炭素へ引き上げられたのです。
〈参考ページ〉
外務省|2020年以降の枠組み:パリ協定
ビヨンドゼロ
大気中に排出されたCO2の削減を目指したスローガンです。
カーボンオフセット
自らが削減できなかった二酸化炭素排出量を、他社からクレジットとして購入し、社会全体でプラスマイナスゼロにする考え方です。企業努力などで削減しきれない分を、資金提供という形でサポートする取り組みを指します。
〈参考ページ〉
環境省|カーボン・オフセット
これらのキーワードは似たようなニュアンスを含むものもあるため、混同されがちですが、それぞれその意味や目標を達成するためのプロセスが異なります。
しかし、どれも共通していることは「温室効果ガスの大幅な削減」です。
建設業界がもたらす影響は大きいって本当?
今、カーボンニュートラル・脱炭素化に向けて、各産業が取り組んでいますが、その中でも私たちが携わる「建設業界」は、特にその動きが注目されています。
なぜなら、建設業界が他の産業と比べても、大量の産業廃棄物と二酸化炭素を排出しているから。
全産業合計で年間で排出される二酸化炭素量(20〜30%)のうち、建設機械やその燃料燃焼からの排出量は2.4%分に相当すると言われています。
「全体の20〜30%の中のさらに2.4%分」と聞くと、ものすごく少量のように感じるかもしれません。
しかし、一人が生活で排出する年間二酸化炭素量が約7.6トンと言われているので、およそ150万人分もの二酸化炭素を建設業界、しかも施工現場だけで排出してしまっている計算になります。
(参考:公益財団法人 地球環境戦略研究機関|1.5°Cライフスタイル ― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢 ―)
そのため、建設業界の今後の動きが、目標達成に大きく影響するとされています。
また、産業廃棄物についても、建設業界が占める割合は決して少なくありません。
全国で排出される年間廃棄物のうち、およそ20%が建設業からのものです。
これらの状況を鑑みると、建設業界の取り組み次第によって、大幅に環境負荷を軽減できることは明らかです。
そのため、国土交通省を先頭に、建設業界における脱炭素化の加速に向き合っており、様々な取り組みが実行されています。
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恩加島木材工業株式会社|コラム|“建てる”前に知っておくべき建築廃材の再利用とは?リサイクル方法や恩加島木材の取り組みを解説
“建築”に関わる取り組みとは?
設計・施工・建材メーカー・管理運営など、“建築”に携わる職種は様々ですが、大切なのは関わる多くの人が取り組みの内容をしっかり理解しておくことでしょう。
そこで、ここでは建設業界に対する「カーボンニュートラル・脱炭素化」の取り組みについて、詳しく解説してきます。
法整備
2021年に国会で採択された「地球温暖化対策計画」と「エネルギー基本計画」を受けて、2050年には住宅・建築物の半数以上がZEH・ZEB基準の省エネ性能を保つことが目標として掲げられました。
それを受け、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(通称:建築物省エネ法)が改正され、次の6つの事柄が明記されました。
- 大規模非住宅建築物に対する適合義務及び適合性判定義務
(中規模以上の特定建築物について、新築時等におけるエネルギー消費性能基準への適合義務及び適合性判定義務を課し、これを建築確認で担保する) - 中規模以上の建築物に対する届出義務
(中規模以上の建築物について、新築時等における省エネ計画の届出義務を課し、エネルギー消費性能基準に適合しない場合は、必要に応じて所管行政庁の指示を受けなくてはいけない) - 小規模建築物に対する建築士による説明義務
(300㎡未満の小規模建築物の新築等に係る設計を設計する際、建築士か省エネ基準への適合性について評価を行うとともに、建築主に対し、省エネに係るその評価の結果等を説明することが義務付けられる) - 省エネ向上計画の認定(容積率特例)
(省エネ性能の優れた建築物について、所管行政庁の認定を受けて容積率の特例を受けることができる) - エネルギー消費性能の表示
(エネルギー消費性能基準に適合している建築物について、所管行政庁の認定を受けてその旨を表示することができる) - 建築物省エネ法の誘導基準の見直し
(性能向上計画認定の誘導水準をより高い水準(ZEH・ZEB水準)に引き上げるため、認定基準、認定申請単位等が改正)
〈参考ページ:東京都都市整備局|建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)
この法律の制定を機に、日本における新築建築物の省エネ性能が格段に上がり、設計・デザインに携わる人の意識も大きく変わったのです。
技術開発
カーボンニュートラル達成に向けて、建材製造や施工技術の開発も進んでいます。
代表的なものは以下の通りです。
- コンクリート内部にCO2を固定できる「カーボンリサイクル・コンクリート(TeConcrete®/Carbon-Recycle)」
- ICT(Information and Communication Technology・情報通信技術)を活用した建設機材やの利用や施工管理
- 製造工程で大幅に省エネできる「プレハブ建築」
- 「ZEH(net Zero Energy House)」の施工及び機器の開発
- 「ZEB(Net Zero Energy building)」の施工及び機器の開発
これらはほんの一例ですが、大規模な研究開発から、既に普及している住宅様式など規模やシチュエーションは様々です。
人工突板には、成長が早く短かいサイクルで植林できる樹木を使うため、森林の活性化も促します。
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建築材料選定
設計やデザインに携わる人が、今すぐできることもあります。
それが、「できるだけ環境負荷が少ない材料を選ぶ」ということ。
「低炭素型コンクリート」や、「CO2吸収コンクリート」を選定する方法もありますが、最も現実的ですぐに取り入れられるのが、「木材の利用促進」です。
木材は、他の建材と比べても製造過程や施工過程における二酸化排出量が少ないため、政府も建物の木造化・木質化を強く推し進めています。
また、森林の樹木が建築木材にするために伐採され、また再び植林されることで、森が活性化して多くの二酸化炭素を吸収してくれます。
特に、海を渡るような長距離運輸の必要がない“国産材”の利用は、ウッドマイレージ(木造輸送量 × 輸送距離)削減に大きく貢献でき、結果的に化石燃料の利用を抑制できるため、二酸化炭素削減に大きく寄与するとされています。
〈関連ページ〉
森林・林業学習館|ウッドマイルズとウッドマイレージ
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設計・内装デザイン
最近は、太陽光や地熱などの自然エネルギーを取り入れた「パッシブデザイン」が住宅のみならず公共施設などの大規模建築物にも取り入れられていますし、高層建築物の木造事例も出てきています。
また、以前は住宅に取り入れられるケースの多かった“ウッドインテリア”が、学校・病院・商業施設にも積極的に導入されるようになりました。
このように、設計や内装デザイン次第で環境負荷の少ない仕様にでき、ひいてはカーボンニュートラル・脱炭素化社会の実現につながるのです。
〈参考ページ〉
林野庁|内装木質化した建物事例とその効果
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企業活動
建築業界全体の大きな取り組みだけではなく、個々の企業がそれぞれ二酸化炭素削減に向けた取り組みを行うことも重要です。
環境省では、オフィスや工場などの省エネ化を目的とした補助事業なども行っており、積極的に再生可能エネルギーを取り入れる企業も増えています。
また、CSR(企業の社会的責任)にCO2削減を掲げている企業も増え、それだけ環境配慮が世間から重要視されているということです。
〈参考ページ〉
環境省|2022年度(令和4年度)二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金に係る補助事業者(執行団体)について
〈関連コラム〉
恩加島木材工業株式会社|コラム|“人工突板”は天然木由来の建材。基礎知識やウッドショックとの関連性について解説
カーボンニュートラルが“受注拡大”につながる可能性も
今まで、カーボンニュートラルは、環境配慮への努力目標であり、企業や個人が自主的に取り組むこととされ、直接利益などには反映されないのが通常でした。
しかし、建設業界の更なる“脱炭素化”を進めるため、国は新たな取り組みを始めました。
それが、「カーボンニュートラル対応試行工事」です。
この工事の対象となる現場では、入札において、審査の際に「カーボンニュートラルに関する取組実績」も審査対象となります。
今はまだ試験段階であり、その対象は公共工事に限られますが、今後は民間建築物にまで派生する可能性もあります。
企業のカーボンニュートラルへの取り組みが、地球環境保全だけではなく入札における“インセンティブ”になるかもしれません。
木材利用が脱炭素化とSDGsを実現します
日本が世界に誇る森林資源ですが、使わなければ衰退していってしまうことをご存知ですか?
森林は、定期的に間伐・伐採されることで健やかに成長するため、木材として使われなければ、バランスの取れた状態とは言えません。
「植える」「育てる」「収穫する」「適材適所で使う」の循環こそが、森林維持において最も重要であり、森林が健全な状態でなければ大量の二酸化炭素を吸収してくれないのです。
この観点からも、木材を継続的に使うことは、カーボンニュートラルだけではなく、SDGs実現においても欠かせないと言っても過言ではありません。
恩加島木材は“内装の木質化”に関わる高品質の製品を取り扱っています
私たち“恩加島木材工業”は、1947年に創業以来、突板製品専門メーカーとして時代の変化を見極めながら、国内に限らず世界中の銘木を使って、良質でバラエティに富んだ内装材を提供し続けてきました。
常備在庫はおよそ400束に上り、その豊富なストックから、仕様やご要望に応じて一枚一枚丁寧に突板を選定しています。
0.2mmという極薄にスライスされた突板は気温や湿度により、生き物のように大きく変化します。
その小さな変化を感じながら、熟練した職人が手作業でそれを貼り合わせていくのです。
木の特性を熟知した“恩加島木材工業”が自信を持ってご提供する突板製品は、多くの住宅や公共施設にて採用されています。
内装の木質化は、今やカーボンニュートラルや脱炭素化の実現には欠かせないと言っても過言ではありません。
輸送過程での二酸化炭素排出量を大きく削減できる地産材(地域材)の取り扱いもございますので、ウッドインテリアをご検討中の方は、ぜひ一度“恩加島木材工業”の製品をご覧ください。
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)
KDパネルとは
KDパネルは、台湾・KEDING社製の天然木化粧合板で、0.5mmの厚単板で木目の立体感を、特殊UV塗装で耐久性と抗菌性能を付与した今までに無い化粧合板です。
天然木本来の質感と、メラミン化粧板のような強度・施工性を兼ね備えています。
恩加島木材工業が自信をもって展開する日本初上陸のプロダクトです。
PANESSE(パネッセ)
天然木練付化粧板のシリーズで、基材によって「不燃ボード」「難燃ボード」「MDF化粧合板」「突板シート」「有孔パネル」「テクスチャーボード」と多彩なラインナップを実現。
樹種も40種類以上からお選びいただけますし、産出地を限定した地産材のご注文も承っております。
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恩加島木材工業株式会社|コラム|恩加島木材の豊富な突板化粧板ラインナップ 厚さと基材の種類を紹介
恩加島木材工業株式会社|コラム|樹種別の特徴や木目のトレンドは?恩加島木材の人気樹種や選び方のポイントを解説
リブパネル・ルーバー
最近トレンドのリブパネルやルーバーも、その他化粧板と同じ木種で製造しております。
リブパネルは、もちろん天然木練付化粧板に貼り付けた仕様で、あらかじめ工場でパネル組みをしている高精度・省施工型の製品です。
ルーバーも同様で、精度の高い高意匠ルーバーとして人気商品です。
基材は木芯・不燃(ダイライト、エースライトなど)からアルミ押出成形品(※ルーバーのみ)まで対応しておりますので、内装制限のある建物にもご採用いただけます。
リブパネルはHPより規格書もダウンロードできますので、是非ご検討ください。
〈関連コラム〉
恩加島木材工業株式会社|コラム|天然木の風合いを生かした“ルーバー”と“リブパネル” 特徴や不燃対応について徹底解説
“WOOD COLLECTION 2023”に出展します
“恩加島木材工業”は、2023年1月に開催される「WOOD COLLECTION 2023」に出展します。
このイベントは、国産木材の普及や価値を見出してもらうことを目的とており、日本全国から集まった企業が、木材製品や技術の展示を行います。
「“木”を生かした設計・デザインをしたい」「木製品の最新情報やトレンドを知りたい」という方は、ぜひご来場ください。
〈関連ページ〉
WOOD COLLECTION 2023(公式ページ)
まとめ|カーボンニュートラル実現には“木材の活用”は欠かせません
脱炭素化社会の実現に向けて、日本でも様々な取り組みが行われていますが、その中でも建設業界の重要性は大きく、業界全体でどれほど二酸化炭素や廃棄物の排出量が減らせるかには、注目が集まっています。
法整備や新しい技術の開発なども進められていますが、設計デザインにおいてすぐに取り組めるのが「木材の活用」です。
製造過程で化石燃料を使わない木材を積極的に取り入れることで、結果的に二酸化炭素排出量を削減できると言われており、その効果は決して小さくありません。
そこで“恩加島木材”がおすすめするのが、「突板製品」です。
“恩加島木材”は長年培った経験と知識をもとに、みなさんの設計デザインをお手伝いさせていただいております。
製品は、天然木突板を使った化粧板やフローリング材、ルーバー、有孔ボードなど多岐にわたっているため、空間のトータルコーディネートも可能です。
「国産材を内装にも取り入れたい」「地域に根付く建物にしたい」とお考えの方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。
〈関連ページ〉
恩加島木材工業株式会社|納入実績
〈日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”
建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。
天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。
しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。
- 重い
- 割れやすい
- 高コスト
- ビスが効かない
それらの問題を解決したのが、「恩加島木材の不燃突板複合板」です。
天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは本実加工も可能です。
日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。
恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします
「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?
恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。
随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
〈関連ページ〉
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