世界の“森林減少”が深刻。原因や実状・建築でできる対策について解説

突然ですが、皆さんは“森林”について考えたことはありますか?

日頃、都会で過ごしている方はあまり意識しないかもしれません。

実は今、地球の陸地面積約30%を占める森林の減少が深刻化しており、私たちの生活にまで影響を及ぼしかねない状況に近づいてきています。

そこで、今回は「森林減少」について、原因から人間に及ぼす影響、“建築”が解決に向けてできることまで、詳しく解説します。

日本の森林面積推移についてもお話ししますので、「現状を知りたい」という方や「環境問題解決に寄与できる建築を実現したい」という方は、是非参考にしてください。

このコラムのポイント
●森林減少は、主に“人為的”な原因によるもので、私たちが意識を変えなければ問題は解決できません。
●建築業界全体が「国産材利用」や「違法伐採の撲滅」に取り組むことで、森林減少を抑止できます。
●恩加島木材は、環境配慮に取り組んでおり、国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。




森林減少の理由は?

丸太

世界的な森林減少は、何も今始まったことではありませんが、近年よりその傾向は強く、急務で解決しなければいけない問題にまで拡大してきてしまっています。

森林面積の変化
引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム|世界の森林面積の変化


森林減少と聞くと、「非計画的な伐採」や、「地球温暖化による自然破壊」などを連想するする人が多いかもしれませんが、実はそれ以外にも色々な原因が考えられています。

森林減少に歯止めをかけるためには、これら一つ一つの原因を解決に導かなくてはいけませんが、発展途上国への経済支援やエネルギー開発など、世界各国が一丸となって取り組んでいかなくてはならず、すぐに改善できないのが現状です。

人為的原因

農地や宅地などへの転用

多くの森林を持つアフリカや南米などの発展途上国では、急激な経済発展を目指す目的で、森林が農地や宅地へ転用されてしまっています。

違法伐採

違法伐採とは、原産国や地域の法令・規定に違反して森林が伐採されることをいい、計画的な森林運営が難しくなるほか、安価で粗悪な材料が出回り、林業・製材業の市場バランスが崩れ、良好な森林維持が難しくなってしまいます。以前よりは減ってきたものの、未だ深刻な問題です。

焼畑農業

焼畑農業とは、東南アジアや南アメリカ、アフリカなどで伝統的に行われてきた農業手法で、その土地の草木を焼き払って残った灰を肥料として活用します。昔は小規模で行われており、農地として活用してからまた再び森が蘇ってから再び焼くというサイクルができていましたが、近年は商業化して、広範囲かつ短いサイクルで行われています。それにより、どんどんと森林が焼き尽くされてしまっているのです。

燃料確保のための大量伐採

先進諸外国では自然エネルギーの活用や原子力発電などが当たり前ですが、発展途上国では未だ薪や炭などの燃料が主である場所も少なくありません。それら地域の人口増加に伴い、燃料確保のための森林伐採が続けられています。

先進国の木材自給率

先進国の木材自給率が100%に達していないことによって、発展途上国の森林にその分の負荷がかかっているのが現状です。アメリカやオーストラリアは80〜90%以上、中国・日本は未だ60%台のままと、100%には遠く及びません。特に、日本は国土の森林率が60%を超えているにも関わらず、41.8%(2021年)です。つまり、豊富な森林資源があるにも関わらず、他の国の森林に“頼り切っている”というのが現実と言えます。

自然災害による原因

森林火災の多発

ヨーロッパや北米・南米、オーストラリアなどを中心に、近年森林火災が多発しています。その原因は、焚き火やタバコによる人為的なものもありますが、高度乾燥による自然発火も後を絶ちません。気温上昇や乾燥による森林火災は、消し止めるまで時間がかかり、広範囲の森林を焼き尽くしてしまいます。




森林減少がもたらす影響は?

日頃、街の中で生活している人にとって「森林破壊」はどこか遠い国の問題と思ってしまいがちですが、住む場所問わず、私たちの生活に大きな影響を及ぼします。

森林に生息する動植物の絶滅危機はもちろんのこと、気候変動への影響が問いただされているのです。

一番問題となっているのが、「地球温暖化への影響」です。

森林は温室効果ガスのうちの一つである「二酸化炭素」を吸収してくれます。

しかし、草木がなくなればその吸収されていた分が蓄積されることは避けられません。

森林減少等に伴う温室効果ガスの排出量は、世界全体の排出量の約2割を占めるため、この減少等を防止することが、地球温暖化対策として極めて重要です。2005年に開催された第11回気候変動枠組条約締約国会議(COP11)で、パプアニューギニアとコスタリカが提案を行って以来、「途上国における森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD※)」のためにどのような仕組みを形成すべきかについての議論が進められています。

引用:環境省|森林の減少と温暖化


このまま森林が減少し続ければ、最悪のシナリオの場合、これから100年で世界平均・約4℃の気温上昇し、世界平均海面上昇は0.26~0.59mという試算もされています。

引用:環境省|森林の減少と温暖化


つまり、私たちが今まで通りの生活を送ることが難しくなる未来が近い将来に迫っているということです。

だからこそ、今や森林減少の抑制は世界共通の課題であり、日本もその一端を担っています。



“日本の森林”減少している?面積推移グラフは?

林業

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した「世界森林資源評価2020:Global Forest Resources Assessment2020(FRA2020)」の結果を見てみると、世界の森林面積は約40億ha、地球の地口面積の約30%を占めていることが分かります。

一見、この数字は多いようにも感じるかもしれませんが、2010年の森林面積と比較すると、年に平均で470万haもの森林が減り続けていることになります。
(参考:林野庁|森林・林業分野の国際的取組

世界各国の取り組みによって減少速度は鈍化しているものの、この面積はおよそ東京ドーム100万個分、北海道の約半分の広さに相当します。

それほどの森林が毎年着実に減っているのが現状なのです。

もう一つ重要なのが、森林が減少している場所に偏りがあり、南米とアフリカがその大半を占めているという点です。

一方で、中国やヨーロッパの一部の国では森林が増減しているというデータもあります。

引用:環境省|国際的な森林保全対策


総じると減少傾向にあるものの、それに歯止めをかける取り組みもなされているということです。

では、私たちの住む日本はどのような状況なのでしょうか?

日本国土における森林面積の割合は、約67%(約2500万ha)で、過去50年間それほどの増減はありません。

引用:森林・林業学習館|日本の森林面積と森林蓄積の推移


この推移を辿っている国は世界の中でも稀なので、この現状だけ踏まえるとポジティブなイメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし、ここで重要なのは、未だ日本の木材自給率は41.8%(2020年)で、半分以上を諸外国からの輸入材に頼っているということ。

これでも日本の木材自給率がここ10年間増加傾向を維持していますが、一方で “森林蓄積”も増え続けています。

“森林蓄積”とは森林資源量の目安で、これが増えているということが「使える森林資源を生かしきれていない」ことを意味します。

引用:森林・林業学習館|日本の森林面積と森林蓄積の推移


林野庁の調査によると、自国の森林資源に対する年間伐採量は、アイルランドは4%以上なのに比べて、日本は0.53%しかなく、全く活用できていないことが分かります。

この原因は、林業や製材業の人手不足や従事者の高齢化が原因とされており、木材自給率を上げていきたい日本にとっては深刻な問題です。

なぜなら、森林は循環させないと健康な状態を維持できないからです。

植林・間伐・伐採を繰り返すことで森林は活性化し、後世まで存続が可能となります。

〈関連コラム〉
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森林の健全な運営を目的に「森林環境税」・「森林環境譲与税」の導入が決定

日本はその国土の2/3以上を森林が占める、世界有数の森林大国ありながらも、その資源を有効的に活用しきれていません。

この現状を打破すべく、国は様々な取り組みを行なっています。

その中でも、国民全てに関わるのが「森林環境税」と「森林環境譲与税」です。

平成31(2019)年3月に「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」が成立しました。

これにより、「森林環境税」(令和6(2024)年度から課税)及び「森林環境譲与税」(令和元(2019)年度から譲与)が創設されました。

引用:林野庁|森林環境税及び森林環境譲与税


「森林環境税」は納税義務者から住民税(地方税)と併せて徴収される国税で、集められた税金は「森林環境贈与税」として都道府県や市町村へ配布され、森林運営や人材育成の資金として活用されます。

皆さんの中にはまだこの存在を知らない方も多いかもしれませんが、実際の税徴収は2024年から始まります。

国民一人一人が協力しあい、日本の森林資源を守ることが目的であり、決して人ごとではないのです。

〈関連コラム〉
恩加島木材工業株式会社|コラム|“森林環境贈与税”をわかりやすく解説|概要や目的から使い道・問題点は?




建築業界が取り組むべき対策は?

未だ多くの木材を海外から輸入している中、特に建築資材として使われる製材や合板(単板、合板、パーティクルボード及び繊維板)は未だ自給率が上がっておらず、多くを輸入材に頼っています。
(参考:林野庁|木材産業と木材利用

また、世界的な違法伐採の問題も未だ深刻で、それを解決しなければ、正当な価格で良質な木材を手に入れることができません。

だからこそ、私たち”建築”に携わる企業が、国産木材や合法的に伐採された木材を積極的に使うことを意識しなくてはいけないのです。

建築業界全体が“木材自給率”や“違法伐採”へ意識を向けることで、世界の森林減少に歯止めをかけることができると言えます。

特に、国産材の積極的な利用は、他国の自然破壊を助長しないだけではなく、自国の経済へもたらす効果も大きいと言われており、2018年には林業の産出額が18年ぶりに5000億を突破しました。

経済低迷が指摘されている日本において、貴重な森林資源を生かすことは社会全体の経済を上向きにする可能性を持っているのです。

また、森林資源の活性化にもつながり、循環型社会、まさにSDGsの実現ももたらしてくれます。

違法伐採の撲滅や国産材利用以外にも、“建築”ができることはまだあります。

例えば、森林を健全かつ永続的に維持するために、成長サイクルの早い植林材を活用し、建築廃材の再利用を行うことで、今ある森林資源を大切に使い続けられるようになります。

ポイント
私たち“恩加島木材”は、植林材を使った「人工突板」の開発・製造を行なっている、数少ない国内メーカーです。


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恩加島木材工業株式会社|コラム|“クリーンウッド法”をわかりやすく解説|目的や国産材利用促進との関係性は?
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恩加島木材の取り組みや今後の目標

私たち“恩加島木材”は、地球環境や森林維持のために様々な取り組みを行っております。

再生エネルギーの導入

自社工場への太陽光発電システムおよび蓄電池の導入を目指しています。
(2023年、本格導入予定)

持続可能な製品の開発製造

植林木を利用した突板の開発を進めています。

地産材の積極的利用

日本の貴重な資源である“森林”、そして林業・製材業を守るため、原産地を日本国内ならず地域を限定した樹種を積極的に取り扱っています。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


〈関連ページ〉
下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)

〈関連コラム〉
地産材についてさらに詳しく知りたい方は、下記コラムも合わせてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説


“WOOD COLLECTION 2023”に出展します

モクコレ2023

“恩加島木材工業”は、2023年1月に開催される「WOOD COLLECTION 2023」に出展します。

このイベントは、国産木材の普及や価値を見出してもらうことを目的とており、日本全国から集まった企業が、木材製品や技術の展示を行います。

「“木”を生かした設計・デザインをしたい」「木製品の最新情報やトレンドを知りたい」という方は、ぜひご来場ください。

〈関連ページ〉
WOOD COLLECTION 2023(公式ページ)




まとめ|森林減少を食い止めるためには「建築」も変わる必要が

森林減少は、もはやアフリカや南米などの“当事国”だけの問題ではなく、そこから木材を輸入している日本を含めた諸外国の責任も大きいです。

特に、森林資源に恵まれた日本において、木材自給率を上げることは喫緊の課題です。

しかし、国や地方自治体がいくら様々な取り組みを行なっていても、それを使う側が変わらなければ大きな成果は得られないでしょう。

だからこそ、私たち“建築に携わる人間”の意識を変える必要があるのです。

やむを得ず輸入材を使う場合は、それが違法伐採によるものでないかをきちんと確認する義務もあります。

「建築」が先頭に立ち、環境保全に向けて動くことこそ、世界の森林減少を食い止めるための、有効的な策と言えるでしょう。

“恩加島木材”は環境保全にも意識を向け、長年培った経験と知識をもとに、みなさんの設計デザインをお手伝いさせていただいております。

製品は、天然木突板を使った化粧板やフローリング材、ルーバー、有孔ボードなど多岐にわたっているため、空間のトータルコーディネートも可能です。

環境配慮型の製品を取り入れたい方や、統一性のある洗練されたデザインをご希望の方は、ぜひに一度恩加島木材の突板製品をご検討ください。

〈関連ページ〉
恩加島木材工業株式会社|納入実績


日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”

難燃_不燃複合板

建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。

天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ6・9mm)を貼り合わせた材料です。

しかし、今までの不燃突板化粧板には施工上の問題点がありました。

  • 重い
  • 割れやすい
  • 高コスト
  • ビスが効かない


それらの問題を解決したのが、恩加島木材の不燃突板複合板」です。

天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
※幅290mmまでは本実加工も可能です。

日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。

不燃突板複合板大臣認定取得


一口メモ
世界的に著名な建築家・隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が設計した和歌山県「有和中学校」新校舎の建物にも採用されました。





恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします

「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?

恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。

随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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