“クリーンウッド法”をわかりやすく解説|目的や国産材利用促進との関係性は?

環境

突然ですが、皆さんは「クリーンウッド法」という法律を聞いたことはありますか?

まだ制定されて間もない法律なので、あまり詳しくは知らないという方がほとんどでしょう。

しかし、世界中から良質な木材を適正価格で購入するようにするためには欠かせない法律です。

そこで、今回は「クリーンウッド法」について、概要から今後の課題点まで詳しく紹介します。

是非、今後設計・デザインする上で、今回紹介します「クリーンウッド法」について考えてみてください。

このコラムのポイント
●クリーンウッド法は、違法伐採の取り締まりを主軸として、地球環境保全など重要な目的があります。
●消費者側も木材製品を選ぶ際に、その樹木が合法的に伐採されたものかどうかを積極的に調べる意識は必要です。
●恩加島木材では、国内外から多数の高品質の天然木を仕入れ、常にお客様のニーズに応えられるよう努めております。




2017年に施行された「クリーンウッド法」とは“違法伐採”を取り締まる法律

税金

クリーンウッド法は、2017年に制定された法律で、正式名称を「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」といいます。

2000年のG8サミットで初めて“森林の違法伐採問題”が取り上げられ、2005年の G8サミットでは、世界の主な木材輸入・消費国が違法伐採抑止強化に合意しました。

その流れを汲んで、日本でもクリーンウッド法が作られたのです。

制定された主な目的は以下の5つです。

  1. 合法的伐採の管理(違法伐採取り締まり)
  2. 地球温暖化防止・自然環境の保全
  3. 森林の持続可能性保持
  4. 林産物の供給安定
  5. 人権侵害抑止


では、それぞれ解説します。

目的① 合法伐採の管理(違法伐採取り締まり)

環境省・自然環境局では、違法伐採を以下の通りに定義付けています。

一般的に違法伐採とは、それぞれの国の法令に反して行われる伐採を指すものと理解されています。例えば以下のように、森林から私たち消費者の手に届くまでの過程で法令に違反する行為があれば、その木材は「違法伐採」とされます。

●許可された量、面積、区域等を超えた伐採
●国立公園や保護区の森林など伐採が禁じられている場所での伐採
●所有権・伐採権がない森林を伐採するいわゆる盗伐、得るべき許可を受けない、または許可証を偽造した伐採や木材取引
●先住民族などの権利を不当に侵害した伐採 など

引用元:環境省|国際的な森林保全対策


違法伐採は今や世界中様々な国で問題視されており、2015年6月のG8エルマウ・サミットでは主要熱帯木材伐採国で生産される木材のうちの50〜90%が違法伐採というデータが発表され、世界全体においても15〜30%程度にまで上るとの推計も出ています。(2012年調査)

また、世界有数の木材輸出国であるロシアについては、連邦森林局が限定エリアを衛星調査したデータによると、違法伐採と疑わしい木材総量は1,900〜2,400 万㎥(2007年調査)、世界自然保護基金(WWF)が木材生産量・国内消費量・輸出量の数値を比較して推計した「出どころが疑わしい木材」の量は、3,740万㎥(2012年調査)とも言われています。

これは、2021年に日本が輸入した丸太の10倍以上もの量です。


では、日本が世界各国から輸入する木材のうち、どれほどが違法伐採によるものなのでしょうか?

イギリスの王立国際問題研究所(チャタムハウス)の調査によると、2013年輸入量の12%が違法伐採と疑われており、同年に調査対象となった木材輸入国5ヶ国のうち、最も多い数値となってしまいました。

違法伐採を取り締まることで、適正価格よりも異常に安価で売買される樹木が減り、結果的には林業に携わる人の雇用を守ることになります。

また、乱獲による環境破壊を抑制できるため、森林がどんどん減少している現状においては、合法的伐採の管理は急務な課題なのです。

目的② 地球温暖化防止・自然環境保全

地球温暖化の原因ともなる温室効果ガスで、最も問題となっているのが「二酸化炭素(CO2)」です。

発電所で石油や石炭から電気を作る過程などで多くの二酸化炭素が排出されており、これらをゼロに近づけるための“脱炭素化”が進められています。

排出量を減らすことはもちろん重要ですが、併せて二酸化炭素吸収量を増やすことも重要しされており、森林の維持や自然エネルギーの利用は有効な手段として認識されています。

引用:脱炭素ポータル|カーボンニュートラル


違法伐採がこのまま増え続けてしまうと、樹木の乱獲が取り締まれずに森がどんどん失われてしまいます。

この問題を解決するためにも、クリーンウッド法は非常に注目されているのです。

目的③ 森林の持続可能性保持

森林は、「植林〜間伐〜伐採〜製材〜植林…」と循環させることで健全な状態を保つことができます。

そのため、正しい知識を持った林業者が適正量を伐採しなくてはいけません。

引用:Edu Town SDGs

しかし、違法伐採をする業者は利益のために乱獲を進め、森のサイクルを乱してしまいます。

何十年も前に植えた樹木が闇雲に伐採されてしまうと、最終的には森は死んでしまうのです。

このような事態を防ぐためにも、クリーンウッド法に基づいて合法伐採をきちんと管理し、後世まで生まれ変わり続ける森林を守らなくてはいけません。

目的④ 林産物の供給安定

自分達の利益ばかりを考えた違法伐採によって、継続的かつ安定的な林産物の供給は難しくなってしまいます。

ただでさえここ数年はウッドショックによって木材価格の高騰や納品遅延が世界中で問題になっており、このままでは更なる価格変動などが懸念されます。

良質な林産物を適正価格で継続的に市場へ供給するためにも、合法伐採の管理は必要不可欠なのです。

〈関連コラム〉
下記コラムでは、ウッドショックについて詳しく解説しています。併せてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|2021年ウッドショックがもたらした影響は?いつまで続く? 解決策や補助金について徹底解説

目的⑤ 人権侵害抑止

森林の乱獲は、その地域にすむ住民の生活環境を乱してしまうだけではなく、慣習的に守り継いできた動植物までも絶滅に追いやりかねません。

また、違法伐採に携わる労働者の基本的人権を侵害しているケースも多く、このような問題を減らすためにも、クリーンウッド法は有効と考える人権団体も世界中に存在しています。



クリーンウッド法の対象となる製品は?

林業

クリーンウッド法の管理対象となっているのは、「木材」及び、「木材を加工し、又は主たる原料として製造した家具、紙等の物品であって主務省令で定められたもの」と明記されています。

具体的には、以下のようなものが対象となります。

〈木材〉

  • 丸太(間伐材も含む)
  • 角材
  • 単板
  • 突き板
  • 挽板(ひきいた)
  • 合板
  • 単板積層材
  • 集成材
  • 木質ペレット、チップ状又は小片状の木材 …

〈建材〉

  • 木質系フローリング
  • 木質系セメント板
  • サイディングボードのうち木材を使用したもの …

〈家具〉

  • いす・机
  • 収納用じゅう器(ロッカー等)
  • ローパーティション
  • コートハンガー
  • 傘立て
  • 掲示板・黒板・ホワイトボード
  • ベッドフレーム …

〈パルプ・紙〉

  • 木材パルプ
  • 印刷用紙
  • インクジェットカラープリンター用塗工紙
  • トイレットペーパー
  • ティッシュペーパー …


特に建材については一度に大量に売買されるため、特に規制が必要とされています。

ですから、設計士・デザイナーは仕様を検討する際には、合法伐採された樹木から製造された建材を選ぶべきなのです。


合法的な製品か見極める方法は?

購入しようとしている製品が合法か否かを確認する際に、まず知っておかなくてはいけないのが、木材関連事業者の種類です。

引用:林野庁|クリーンウッド法の概要


上記の「第一種木材関連事業」は、下記についての情報を入手する必要があります。

  • 種類及び原材料となっている樹木の樹種
  • 原材料となっている樹木が伐採された国又は地域
  • 重量、面積、体積又は数量
  • 原材料となっている樹木の所有者又は我が国に木材等を輸出する者の氏名又は名称及び住所
  • 我が国又は原産国の法令に適合して伐採されたことを証明する書類


クリーンウッド法では、これら情報が不明確である、もしくは何かしらの方法で違法性が発覚した場合は、そのような製品を取り扱わないように推奨されています。


「第二種木材関連事業」においては、第一種木材関連事業者や他の第二種木材関連事業者より木材を譲り受ける場合、その業者が合法性を確認できた根拠を示す資料もしくは記録した書類を確認しなくてはいけません。

ただし、ここで重要なポイントは「クリーンウッド法の登録事業者でなくても、合法木材の取り扱いは可能」という点です。

林野庁が解説したHPでは、クリーンウッド法登録事業者を検索することもできますが、ここに記載されている業者が合法木材を取り扱っている会社の全てではありません。

この点を勘違いする方が多いので、十分理解しておきましょう。



「クリーンウッド法」の問題点と改善点

違法伐採を取り締まる法律は世界各国で制定されていますが、罰則の有無は国によってまちまちです。

日本では、クリーンウッド法に基づく合法木材利用はあくまで “努力義務” とされています。

(事業者の責務)

第五条 事業者は、木材等を利用するに当たっては、合法伐採木材等を利用するよう努めなければならない。

引用:e-Gov法令検索|合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律


つまり、罰則はありません。

ちなみに、アメリカのレイシー法やEUの欧州連合木材規則では、木材及び木材製品の供給事業者に対して、合法かどうかの確認を義務付けており、これを怠れば罰則が課せられてしまいます。

そのため、日本においてはクリーンウッド法に基づく登録業者になる意義は、「合法な樹木を取り扱っている」ことをアピールするだけに留まっています。

これは、競合他社との差別化を図れるというメリットがあるものの、登録業者であっても違法伐採された木材を扱うことができるため、どれほどの効果が得られるかは不透明であるのが現状です。

登録していない業者でも、きちんと合法樹木かどうかの確認をしているところも多く、登録業者であっても合法かどうかを明確に確認していない会社も少なからず存在しています。

事実、農林水産省林野庁と公益財団法人 日本住宅・木材技術センターが作成した「クリーンウッド法に基づく事業者登録のすすめ」パンフレットには、第二木材関連事業者について以下のような記載があります。

木材等の購入先である木材関連事業者が発行する合法性を確認できたとする書類に基づき、合法性の確認を行います。

合法性が確認できない場合でも、追加の措置は求められません。

引用:クリーンウッド法に基づく事業者登録のすすめ


つまり、現法では完璧に合法伐採による木材を管理することは困難であるため、法で縛るのではなく、全ての事業者の意識改革が必要ということです。

また、消費者も、制度の作られた意味を正しく理解して、購入する製品のバックグラウンドを積極的に調べて見ることも重要となります。



恩加島木材の取り組み

私たち恩加島木材では、国内各地の地産材利用も積極的に行なっており、その材木がどのように伐採されたかをしっかりと自分達の目で確認しております。

突板の流通市場に頼らずに原木市場や製材所から直接仕入れて、自社で選木・加工・販売することも可能です。

原産地を日本国内に限定した樹種を常時取り扱っているほか、地産材を利用した突板も数多くご注文いただいております。その建物の社会的価値を高めるためにも、ぜひ国産材を使った突板製品をご検討ください。

地産材の納入実績
JR北陸新幹線・長野駅 コンコース内天井(長野県産杉利用)
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)


〈関連ページ〉
下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|製品案内|原産地(日本)

〈関連コラム〉
地産材についてさらに詳しく知りたい方は、下記コラムも合わせてご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説



まとめ|消費者も「クリーンウッド法」を意識することが大切

クリーンウッド法は世界で問題視されている違法伐採を取り締まるための法律ですが、その強制力は弱く、まだまだ改善点が多いのが現状です。

そのため、生産者や販売者はもちろんの事、消費者側もこの問題を深刻に捉え、自ら積極的にその製品について調べる意識を持たなくてはいけません。

全ての人の意識が変わることにより、法制度で縛るのではなく「違法伐採の材木は買わない・使わない」ことが当たり前の世の中になることが最も理想的でしょう。

また、信頼できる木材関連事業者をしっかりと見極めることも大切です。

私たち恩加島木材では、環境保全や森林維持のために、自分達の目で信頼できる材木だけを取り扱っています。

様々な木目の化粧板やルーバー・リブパネル、有孔ボードなどを製造販売しており、空間全体をトータルコーディネートすることも可能です。

統一性のある洗練されたデザインをご希望の際には、ぜひに一度恩加島木材にご相談ください。

〈関連ページ〉
当社の納入実績は下記ページをご覧ください。

恩加島木材工業株式会社|納入実績


日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”

難燃_不燃複合板

建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。

天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ15mm)を貼り合わせた材料です。

しかし、今までの不燃突板複合板には施工上の問題点がありました。

  • 重い
  • 割れやすい
  • 高コスト
  • ビスが効かない


それらの問題を解決したのが、恩加島木材の不燃突板複合板」です。

天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。

日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。

不燃突板複合板大臣認定取得


一口メモ
世界的に著名な建築家・隈研吾氏が主宰する隈研吾建築都市設計事務所が設計した和歌山県「有和中学校」新校舎の建物モックアップにも採用されました。





恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします

「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?

恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。

随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

〈関連ページ〉 カタログ請求や見積依頼、お打合せ依頼等は下記ページよりお問い合わせください。
恩加島工業株式会社|お問い合わせ