日本の木材自給率はどれくらい?国の取り組みからウッドショック・世界情勢との関係まで詳しく解説
皆さんは、「木材自給率」について考えたことはありますか?普段何気なく生活していると、あまり意識しないという方が大半でしょう。しかし、この木材自給率は地球環境問題や経済と密接に関連しています。
そこで、今回は「木材自給率」の基礎知識から、国としての取り組み、国際情勢との関係性についてまで詳しく解説します。木材自給率について考えることで、日本の自然資源への考えが変わるはずです。ぜひ、設計やデザインの参考にしてください。
●木材自給率の更なる上昇は、経済や環境に関する問題の解決につながります。
●恩加島木材では、国産材や地産材にこだわった商品を製造販売しています。
Contents
日本は世界有数の森林大国であるものの…
普段、商業エリアや住宅エリアで過ごしているとあまり実感しないかもしれませんが、実は日本国土の2/3は森林です。そして、そのうちの約40%が人工林(育成林)、つまり人の手によって植林された森林となります。
これら人工林は、戦後復興の一貫で昭和20年頃に植林され、今まさに木材として適した成熟期に突入しています。しかし、残念ながら豊富な森林資源を持っているにも関わらず、日本は世界有数の木材輸入国というのが現状です。
その証拠に、自国の森林資源伐採割合は世界の中でも極端に少なく、国内森林蓄積量は増える一方。つまり、全く自然を活かせていないことがわかります。
この現状を打開すべく、国や自治体が日本の木材自給率を上げるための取り組みを推進しており、それに伴って建築業界全体で建物の“木質化”に邁進しているのです。
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最新の木材自給率や今までの推移は?
国や自治体の積極的な取り組みのおかげで、日本の木材自給率は2011(平成23)年から10年連続で増加しており、ついに2020(令和2)年には、木材の自給率が41.8%にまで上がりました。(林野庁|木材自給率は48年ぶりに40%台に回復)
これは、48年ぶりの数値ということで大きな話題となり、林業・製材業に携われる人の大きな励みとなりました。
現状、木材の種類別輸入量を見ると、どの品目においても輸入量が減少しており、特に丸太については輸出大国であるロシアへの依存を大きく減らし、国産材の積極的な活用を実践できています。併せて、日本から海外に向けた林産物の輸出量も年々増加しており、確実に官民の取り組みが実を結び始めたのです。
しかし、まだまだ林業・製材業の人材不足は否めず、住宅で使われる無垢フローリングに使われる資材はそのほとんどを輸入材に頼っています。
そのため、世界情勢が不安定な昨年(2021)からは、大きく価格が上昇してしまっており、住宅業界に大きな影響を与えています。つまり、新築やリノベーションを検討中の方にとっても決して他人事ではありません。
このように、国の木材自給率を上げる取り組みは結果を出しつつあるものの、まだまだ十分ではなく、世界情勢によって建材の価格が大きく変動してしまうのが現状です。住宅市場や建設業への影響を考えると、今後は国・自治体での取り組みに加えて、企業単位でも木材自給率を上げるために働きかけなけれはいけません。
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木材自給率の上昇が重要な訳は?
なぜ今これほどまでに木材自給率の上昇への取り組みが注目されているのかというと、環境面・経済面でのメリットがあるためです。主な理由は下の4つです。
- ウッドショックに伴う輸入材の価格高騰や、納期遅延が深刻化しているため。
- 林業や製材業に携わる人材の高齢化が進んでいるため。
- 過疎地域と都心部での経済格差が広がっているため。
- 国を跨いだ木材の運搬へ多量のエネルギーを使用してしまうため。
理由① 木材の価格高騰・納期遅延
まず、現時点で直面している大きな問題としては、「木材の価格高騰と納期遅延」です。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、北米の住宅着工数増加や中国の木材需要が急激に拡大し、世界的に深刻なウッドショックが勃発してしまいました。そのため、限られた木材を先進国が囲い込み、価格が高騰したのです。また、輸出に必要なコンテナ不足も深刻で、運送コストも増大し納期の遅延が発生しています。
こういった現状を踏まえて、輸入材への依存を減らして、国産材へシフトすることが求められているのです。
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理由② 人材の高齢化
国内では、林業・製材業に関わる人材の高齢化も深刻化しています。特に林業については深刻で、従事者の平均年齢は全産業の平均年齢46.9歳を大きく上回る52.4歳(2015年時点)です。徐々に若年齢化しているものの、先行きは心配です。(林野庁|林業労働力の動向より)
このままだと、貴重な資源である森林が荒廃していってしまうため、林業・製材業が発展できるよう、建築業界はより一層国産材を利用することが必要と考えられています。
理由③ 過疎地と都心部の経済格差
林業や製材業を主の収入源としているエリアは、高齢化と同時に経済が衰退してしまっています。そのため、段々と都心部との経済格差が生まれているのが現状です。
このギャップを埋める方法の一つが、「国産木材の利用」です。過疎化が進んでいる地域の林業・製材業が活性化することで、長期的にみると、一人当たり所得でみた地域間の経済格差は是正されるとされています。
理由③ 消費エネルギーの削減・脱炭素化
木材を海を渡って運搬するということは、大量のエネルギーを消費してしまうということです。今まで輸入木材に頼ってきた日本は、世界でも有数の運送エネルギー消費国でした。その指数を表すのが、ウッドマイレージで、数値が多いということは、多くの二酸化炭素を排出しているということを表しています。
つまり、輸入木材へ依存せずに国産木材を積極的に使うことは、カーボンニュートラルに貢献し、ひいては脱炭素化に向けた取り組みとなるのです。また、木材は他の建材と比べても生産過程の消費エネルギー量が少ないため、国は公共施設だけではなく民間施設の木造化を推し進めています。
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世界情勢から読み解く日本の木材自給率や木材輸入出量
ここまでもお話した通り、建築資材を始めとした木材の価格は、世界情勢の影響を大きく受けます。特に、下の輸入相手国の動向には気を配らなくてはいけません。
輸入相手国 | 輸入量 | 比率 |
スウェーデン | 178,829 m3(13,691,220千円) | 16.9% |
ロシア | 172,218 m3(11,792,717千円) | 16.3% |
カナダ | 163,314 m3(16,077,952千円) | 15.5% |
フィンランド | 160,234 m3(11,349,214千円) | 15.2% |
オーストリア | 61,691 m3(4,496,013千円) | 5.8% |
また、世界経済の中心であるアメリカと中国の状況も無視できません。これらの情勢や動向によって日本の木材価格は変動するため、安定した価格で木材を供給するためには、木材自給率をさらに引き上げる必要があるのです。
では、現状世界各国ではどのような動きがあるのでしょうか?
その① ロシアウクライナ情勢
ロシアは世界トップの木材輸出大国です。現在、ロシア政府は2022年末まで日本を含めた「非友好国」に対して、木質チップ・丸太・単板の輸出を禁止する措置をとっています(2022年3月9日時点)。現時点では製材や集成材の輸出は規制していませんが、今後はどのような決定があるかわかりません。
そのため、既に規制されている品目については価格が世界中で高騰しており、今後も建設業界へ直接的な打撃は避けられません。
その② EUの動き
EUは、2030年における炭素排出量を55%削減することを目標とした「Fit for 55」を掲げており、その一環として「EU森林戦略2030」を策定しました。
この戦略は、森林の質と量を改善するための具体的な方法を提示し、森林保護・回復・強靭化を目的としています。具体的な内容は以下の通りです。
持続可能な森林バイオエコノミーの推進
- 木材製品の長寿命利用促進
- 木質バイオますエネルギー利用の促進
- エコツーリズムの利用促進
- 人材開発
森林保護・回復・拡大
- 天然林・原生林の保護
- 森林経営の強化
- 植林の推進
- 森林所有者への経済的支援
森林のモニタリング・報告・データ収集
- 森林監視、報告、データ収集に関する法整備
その他
- 研究・イノベーションの強化など
その③ 中国の動き
経済成長に伴い、住宅開発が未達成であるため、日本からの木材輸入額は増加しています。(林野庁|令和2年木材需給表より)
しかし、住宅新規着工面積は減少傾向であり、さらに中国国家発展改革委員会は、高さ250メートル以上の建築物の新規建設を制限し、500メートル以上の建築物の新規建設を禁止する方針を固めました。
そのため、今後中国での市場拡大はあまり期待できず、併せて中国からの木材輸入量も減少しています。(林野庁|令和2年木材需給表より)
その④ アメリカの動き
コロナ禍でリモートワーク化がより進んだアメリカでは、住宅ローンの低金利化の影響もあって新築住宅着工件数が急激に増加しています。
そのため、今まで北米から輸出されていた木材を自国で囲い込む動きが活発になり、2020年夏頃から世界価格が高騰しました。
今度も北米からの木材確保は難しくなることが想定されます。
木材自給率を引き上げるために“建築”ができる3つのこと
「木材自給率が上がっている」と言っても、その理由は建築の木質化だけではありません。バイオマス燃料として使われるペレットなどの利用増加も大きく寄与しています。
更なる木材自給率の上昇には“建築”ができることはまだまだあります。なぜなら、“建築”が後世まで残る遺産となるから。日本の貴重な森林自然をエネルギーを作ることに使うことも重要ですが、未来に向けて「残す」ことも同じくらい大切です。
ぜひ、建物の設計やデザインをする際には、「3つの取り組み」を意識してみてください。
その① 建物の木造化
建物の構造体に木材を使う取り組みが進められており、住宅や小規模施設だけではなく、大規模な施設においても木造件数が増えています。
〈関連ページ〉
林野庁|建築物の木造化・木質化事例、参考資料
その② 内装の木質化
木質内装材の技術革新によって準不燃や難燃指定を受けた材料が増えたこともあり、様々な建物の内装木質化が進んでいます。。内装に木を使うことで、健康面や精神面でのメリットも立証されていて、その魅力が再認識され始めています。
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その③ 国産材の積極的利用
国産材を積極的に利用することは、木材自給率上昇に直結します。そのため、国や自治体で補助制度を設けるなど、利用促進に向けた取り組みが実現しています。
恩加島木材の取り組み
私たち恩加島木材では、国内各地の地産材利用も積極的に行なっております。地産材利用は、その土地の子供たちへの木育にも大きな意義があり、さらには地元の利用者から愛される建物になるはずです。
当社では、突板の流通市場に頼らずに原木市場や製材所から直接仕入れて、自社で選木・加工・販売することも可能です。原産地を日本国内に限定した樹種を常時取り扱っているほか、地産材を利用した突板も数多くご注文いただいております。その建物の社会的価値を高めるためにも、ぜひ国産材を使った突板製品をご検討ください。
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)
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下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。
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地産材についてさらに詳しく知りたい方は、下記コラムも合わせてご覧ください。
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〈日本初〉大臣認定取得|恩加島木材の“不燃突板複合板”
建築基準法上で「特殊建築物」に指定される商業施設や宿泊施設などを建てる際に欠かせないのが、“不燃突板複合板”です。
天然木突板(厚さ0.2mm)に不燃材料である無機質不燃板(厚さ15mm)を貼り合わせた材料です。
しかし、今までの不燃突板複合板には施工上の問題点がありました。
- 重い
- 割れやすい
- 高コスト
- ビスが効かない
それらの問題を解決したのが、「恩加島木材の不燃突板複合板」です。
天然木突板(厚さ0.2mm)+ 無機質不燃板「ダイライトFAL」(厚さ6mm)+ 特殊合板(厚さ9mm)で構成されているため、ビスが効いて割れません。また、軽量化されたため、施工効率もアップします。
日本で初めて大臣認定を受けたため、安心して採用していただけます。
まとめ|木材自給率の上昇はこれからの日本経済を支える可能性も
木材自給率を上昇させることは、日本経済を活発化させるだけではなく地球環境への負荷も軽減できる急務な取り組みです。建物に“木”、特に国産材や地産材を取り入れることは、日本が抱えている様々な問題解決へ大きく貢献することになります。
私たち恩加島木材では、世界各地の木材だけではなく、国内の優れた木材を使い、様々な木目の化粧板やルーバー・リブパネル、有孔ボードなどを製造販売しております。そのため、空間全体をトータルコーディネートすることも可能です。統一性のある洗練されたデザインをご希望の際には、ぜひに一度恩加島木材にご相談ください。
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恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします
「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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