意匠性・機能性を兼ね備えた“造作家具” メリット・デメリットから設計のポイントまで詳しく解説
施設や住宅を設計・デザインをする上で、「造作家具」は切っても切り離せないキーワードです。特に、意匠的なこだわりが大きければ大きいほど、既製家具ではどうしても納まらないことも多いはず。しかし、造作家具はとても奥深く、その詳細まで知らない方も少なくありません。
そこで、今回は造作家具のメリット・デメリットから設計のポイントまで、詳しく解説します。内装デザインや設計に造作家具の導入を検討中の方は、ぜひ皆さん参考にしてください。
●造作家具のプランニングには、建物の設計デザインよりも一層ディテールを意識しなくてはいけません。
●風合いや高級感にこだわる場合には、天然木突板化粧板を使いましょう。
Contents
造作家具とは?メリット・デメリットはある?
「造作家具」とは、設計・デザインから製作、設置までを全てフルオーダーで行う家具のことです。造り付け家具やオーダーメイド家具とも呼ばれますが、建築業界では一貫して「造作家具」と呼ばれています。
既製品とは異なり現場ごとにプランニングされるため、どれほど空間と調和する家具になるかは、設計士の“腕の見せ所”です。
では、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
メリット
主なメリットは下の4つです。
- 空間にフィットして、デッドスペースを作らない。
- 内装ドアやフロア材とトータルコーディネートすることもでき、統一感のある空間に仕上がる。
- 壁や床に固定する設計にすれば、地震時に転倒のリスクが少ない。
- ディテールにまでこだわれるため、利便性が高い。
まず、既製品とは異なり設置する場所に合わせて設計されるため、デッドスペースが生まれません。そのため、限られた空間をフルに活用できます。
そして、面材次第では、内装ドアやフロア材、カウンター材などとのトータルコーディネートも容易なため、まとまりのあるインテリアデザインが生まれます。
壁に固定しやすいというのも造作家具の利点です。既製家具の場合、そもそも壁に固定する仕様になっていなかったり、設置壁の下地位置とうまく合わずに、きちんと固定できないというケースや往往にしてあります。また、後付けの家具固定部材を用いると、デザインを損ねてしまうことも…。
しかし、造作家具なら設置場所の状況に合わせて、補強を施すこともできますし、固定部材が見えないデザインにすることも可能です。このような観点からも、造作家具は耐震性が高いとされています。
サイズや耐震性に限らず、使い勝手や細かい機能など、ディテールにこだわれるのも造作家具の魅力です。家具を設計する際には、棚の高さやピッチ、金具の位置、扉の開閉機構など、細部にまで配慮した設計が可能になります。一見面倒に感じるこの作業によって、利用者が使いやすく無駄のない家具が出来上がるのです。
デメリット
メリットの多い造作家具ですが、知っておかなくてはいけないデメリットもあります。
- 製作費用や製作日数がかかる。
- 移設時やメンテナンス時に付帯工事が発生することがある。
- 完成まで現物を確認できない。
まず、最も大きな注意点は「費用がかかる」という点です。既製品と比べて、設計士・デザイナーや施工業者がイチから作りあげるため、どうしても日数や手間がかかってしまいます。ですから、納期(工期)や予算がシビアな場合には、注意しましょう。
壁や床に固定することの多い造作家具は、移設しにくいという点にも配慮しなくてはいけません。設置後に移設したりメンテナンスする場合、内装補修などの付帯工事が伴う可能性もあります。そのため、設計段階で十分にプランを練り、極力移設はせずに、メンテナンスしやすい構造にしておくことが肝心です。
そして、造作家具は“一点物”が多いため、完成時まで現物を確認できない点も難点です。特に、建築知識のない施主様にプレゼンする際には、パースなど雰囲気が分かる資料を作成しなくてはならず、場合によってはモックアップ(模型)などを準備しなくてはいけないでしょう。
どんな家具が作れる?
造作家具と言っても、そのスタイルは様々です。基本的には設計さえできればどのような家具でも作れますが、主に下記のようなものが製作されています。
- カップボードやテレビボード
- 壁面収納やパーテーション棚
- 本棚やディスプレイ棚
- オーダーキッチンや洗面化粧台 …
まず、カップボードやテレビボードは主に住宅の現場で作られます。既製品でも多く販売されていますが、収納するものやサイズ、設置スペースに合わせてカスタマイズすることで、しっかりと収納でき生活感のないスタイリッシュなインテリアに仕上がります。
壁の全面や一部を収納にする場合にも、造作家具は適しています。メーカーでは“システム家具”と称して、既製パーツを組み合わせる商品もありますが、特殊な壁面や狭小な場所にはうまくフィットしません。そのような場合にこそ、造作家具がおすすめです。
また、間仕切り壁を兼ねたパーテーション棚や、本棚、ディスプレイ棚の素材にこだわりたい方は、ぜひ造作家具を検討してみましょう。オーダーキッチンや洗面化粧台とのコーディネートも可能です。
住宅にも公共施設にも“造作家具”はおすすめ
一般の方では「家具=住宅」というイメージを持つ方もいますが、公共的な施設にも造作家具が多く取り入れられています。
例えば、学校や幼稚園などの教育施設においては、子供の体にフィットしたスケール感は必須です。また、木材を生かした家具で“木育”を目指す施設も少なくありません。そのため、積極的に“木”を取り入れた事例が増えています。
「木育」で最も基本となることは、木材に親しみを持ってもらうことです。木材の良さを知り、親しむ経験が、木材を正しく利用し、森林を守ろうとする気持ちのもとになるからです。大量消費社会にあって、日本人が風土の中で大切に扱ってきた木材または木材製品に愛着を持ち、木材利用に肯定的な人間を育てるためには、木材についての理解や利用技術を学ぶよりも前に、受講者の五感に訴える「木の体験」が必要なのです。
引用元:木育.jp
造作家具が導入されているのは、教育施設だけではありません。医療施設においても、造作家具の価値が見直されており、特に木材家具については、その“温もり”や“リラックス効果”を目的として、多くの場所で設置されています。
また、店舗においても造作家具ですとコンセプトに合わせた自由なプランニングが可能となるため、コストをかけてでも設置するケースが多いです。
造作家具の設計ポイント
では、造作家具を設計する際にはどのようなポイントを押さえればよいのでしょうか?ここでは、主なポイントを4つ紹介します。
ポイント① サイズ・高さ
造作家具をプランニングする際には、下記のような図面を作成しなくてはいけません。
- 断面詳細図
- 展開図
- 什器図(意匠図)
- 施工図面(製作図面)
間取りの平面図や断面図は縮尺1/100〜1/200が主流なのに対して、これら家具図面は縮尺1/20とかなりディテールまで書き込みます。そのため、家具の設計に慣れていない人ですと、つい設置場所の寸法にジャストフィットするように設計してしまいます。
しかし、それでは実際に「現場に入らない」ということも…。
ここで注意しなくてはいけないのが、“クリアランス”です。設置場所の左右や上下が壁・床・天井で囲われている場合、空間にぴったりはまるように設計してしまうと、設置できません。なぜなら、新築でも壁・床・天井の不陸(面が水平垂直でなく、多少の凹凸があること)は否めないためです。
ですから、一般的には、最低でも上下左右に10〜20mm程度の余裕(=クリアランス)を確保して設計しなくてはいけません。
「空いた隙間がみっともない」と思うかもしれませんが、そこで有効なのがフィラー(幕板)。造作家具の設計には欠かせないパーツで、家具周りに生まれた隙間を役割を持ちます。
使い勝手や見た目を重視することは大切ですが、このような施工上致し方ない“都合”についても、配慮して設計しましょう。
扉・引き出しの有無
扉や引き出しを取り付ける場合、面材の仕様によって大きくコストが変わります。また、中に収納するものによって、むしろオープン棚の方が使いやすいという場合もあります。
ですから、意匠的な観点だけではなく、どのような物をしまうのかや、利用者がどのような使い方をするかを十分シミュレーションして扉・引き出しの有無を検討してみてください。ちなみに、扉・引き出しが増えれば増えるほど、修理などメンテナンス手間は増えます。
建築金物
丁番や引き出しレールによって、手挟み事故防止や耐震性に大きく影響を及ぼします。また、取っ手など直接目に入る金具については、デザインを考える上でポイントとなるでしょう。
予算に合わせてこれら金物までこだわれる点こそ、造作家具の醍醐味です。ですから、ぜひディテールまでじっくりこだわってプランニングしてください。
最近では、見た目には取っ手が付いていないように見えるマグネットプッシュや、扉へ直に手をかけて開閉する取っ手なし扉も人気です。ただし、これらは、扉が汚れるというリスクもあるため、公共施設で用いる際には注意しましょう。
仕上げの化粧板
造作家具の第一印象を決めるのが、本体や扉などに用いる仕上げ化粧板です。化粧板の風合いやカラーによって、与える印象は全く異なります。また、表面塗装のクオリティによって、耐久性・耐汚性にも影響を与えるため、住宅の場合も公共施設の場合にも、化粧板選びは重要なポイントです。
質感を重要視する際には、「天然木突板化粧板」がおすすめ。メラミン化粧板やオレフィン化粧板にも木目をプリントした物はありますが、自然な風合いや光沢感は表現しきれません。
〈関連コラム〉
下記コラムでは、様々な化粧板について詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
恩鹿島木材工業株式会社|コラム|天然木にこだわるなら突板練付化粧板。メラミン化粧板・オレフィン化粧板・プリント化粧板との違いは?
恩加島木材の製品なら内装ドアとのコーディネートも可能
恩加島木材では、天然木にこだわり抜いた突板化粧板を数多く取り扱っています。樹種によっては、ドアやパーテーション、ルーバー、有孔ボード、フローリングなど、様々な商品へ加工できるため、空間全体のトータルコーディネートが可能です。
また、UV塗装や抗ウイルス塗装に対応している商品も多く、高耐久性や衛生性を必要とする公共施設などへも安心して導入していただけます。
ホームページでは、随時導入事例も紹介していますので、ぜひデザインの参考にしてください。
〈関連ページ〉
施工事例や取り扱い樹種、商品の詳細については、下記ページをご覧ください。
恩加島木材の取り組み
私たち恩加島木材では、国内各地の地産材利用も積極的に行なっております。また、突板の流通市場に頼らずに原木市場や製材所から直接仕入れて、自社で選木・加工・販売することも可能です。原産地を日本国内に限定した樹種を常時取り扱っているほか、地産材を利用した突板も数多くご注文いただいております。その建物の社会的価値を高めるためにも、ぜひ国産材を使った突板製品をご検討ください。
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)
〈関連ページ〉
下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。
〈関連コラム〉
地産材についてさらに詳しく知りたい方は、下記コラムも合わせてご覧ください。
恩加島木材工業|コラム|今こそ木材も“地産地消”する時代。脱炭素化に向けた地産材・地域材利用について解説
まとめ|造作家具で建物のフィットするハイセンスな空間に
造作家具は、設計から製作まで既製品と比べても大変手間がかかります。しかし、その分ハイクオリティなデザインと、利用者にとって使い勝手のいい空間に仕上がることは間違いありません。そのため、住宅はもちろん、福祉施設、教育施設、店舗・ホテルなど…、多種多様な建物に取り入れられています。
空間をできるだけ無駄なく活用でき、さらにはまとまりのあるインテリアデザインにできることこそ、造作家具の魅力です。
私たち恩加島木材では、様々な木目の化粧板やルーバー・リブパネル、有孔ボードなどを製造販売しております。そのため、空間全体をトータルコーディネートすることも可能です。統一性のある洗練されたデザインをご希望の際には、ぜひに一度恩加島木材にご相談ください。
〈関連ページ〉
当社の納入実績は下記ページをご覧ください。
恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします
「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問やご要望にお応えします。随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
〈関連ページ〉 カタログ請求や見積依頼、お打合せ依頼等は下記ページよりお問い合わせください。
恩加島工業株式会社|お問い合わせ