建築基準法で定められた“内装制限”とは? 概略や緩和から「木」を取り入れる方法まで詳しく解説
公共施設を設計デザインする上で重要な法規はいくつもありますが、その中の一つが建築基準法内で定めれらている「内装制限」です。
「内装制限」は火災時の被害を最小限に食い止めるための規制であるため、「木は使えない、燃えない素材にしなくてはいけない」と間違った解釈をしてしまっている方も少なくありません。しかし、実はそうとは言い切れない場合もあります。
そこで、今回は建築基準法における「内装制限」の概略や緩和措置について、詳しく解説します。公共施設の設計やデザインをする際に、ぜひ参考にしてください。
・「内装制限」の対象であっても、不燃・難燃認定を受けた木質系建材を取り入れれば、ぬくもりのあるデザインの実現が可能です。
Contents
“内装制限”とは?なぜ法規制される?建築基準法のどの条文?
日本国内で建築物を計画する場合、全ての条件や仕様は「建築基準法」で厳格に定められています。
その中でも、火災時に内装が燃えることで避難経路を妨げたり、延焼するのを防ぐための措置として、第35条の2「特殊建築物等の内装」では、天井と壁に使用できる建材が制限されています。
これを一般的に「内装制限」と呼びます。
・劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
・病院、診療所、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎など
・学校、体育館、博物館、図書館、ボーリング場、スケート場など
・百貨店、マーケット、展示場、ダンスホール、キャバレー、料理店、飲食店、遊技場、公衆浴場など
・倉庫
・自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ
・危険物貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場なども
ただし、どの特殊建築物においても同等の制限が設けられている訳ではありません。次の4つのポイントによって、制限の内容が異なります。
- 建物の用途・構造・規模区分
- 該当する用途に供する部分の床面積の合計・階数
- 耐火建築物か準耐火建築物、その他の建築物かどうか
- 居室もしくは廊下・階段・通路かどうか
これらの条件によって、使用できるのが「難燃材料・準不燃材料・不燃材料」と限定されます。
〈関連ページ〉
内装制限の詳しい内容は、下記ページをご覧ください。
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下記コラムでは、環境的観点から木の魅力について解説しています。気になる方は、是非合わせてご覧ください。
恩加島木材工業株式会社|コラム|公共施設・商業施設に欠かせない不燃材料。防火性能や突板練付不燃板について解説
内装制限には緩和措置がある?
一見かなり厳しい制限のように感じるかもしれませんが、一定の条件を満たしていれば緩和措置を受けることができます。建築基準法施行令・第5章の2「特殊建築物等の内装」第128条の4(制限を受けない特殊建築物等)及び第128条の5(特殊建築物等の内装)、告示251号ではその詳細が明記されています。
緩和措置が利用できる施設の主な条件を要約すると、以下の通りです。
- 避難経路を含まない居室である
- 100㎡以内で間仕切り壁もしくは防火設備で区画分けされている
- 天井の高さが3m以上であること
- 避難階もしくは避難階の真上階である
- 屋外へ避難できる出口がある
- スプリンクラーや水噴霧消火設備、泡消火設備などの自動式設備がある …
これらは条件のうちの一部です。一つもしくは複数備えることで、使用する材料に対して制限が緩和されます。このように、内装制限の緩和措置を受けるためには、数々の条件を満たさなくてはいけません。詳しくは、必ず自治体の担当部署に確認してください。
〈関連ページ〉
下記ページでは、「内装制限の緩和」に関する条文が掲載されています。詳細を知りたい方は、必ずご覧ください。
建築基準法施行令(第5章の2「特殊建築物等の内装」第128条の4および第128条の5)
建築基準法施行令・国土交通省告示第251号
「木」を積極的に取り入れた特殊建築物が増えている?その理由は?
建築基準法で定められている「内装制限」ですが、世界的に建築物の木質化が推し進められていることもあり、年々緩和措置が増えている傾向にあります。
緩和が進んでいる背景には、建築基準法改正だけではなく、建材そのものの耐火・防火性能に関わる技術革新が進んでいるという点もポイントです。
さらに、2021年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:木材利用促進法)」が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と改定され、その対象が公共施設だけではなく民間施設にまで拡大されました。
それにより、中小規模施設だけではなく大規模施設においても「木」を積極的に取り入れた事例は増え続けています。
木材を建物に取り入れることは、環境的な観点だけではなく、身体的心理的効果が得られ、発注企業の社会的責任(CSR)をアピールする上でも注目されています。今後、より一層その件数は増加していくことが予想されているため、設計デザインに携わる方は“木質化”に関する知識を積極的に習得することが求められています。
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下記コラムでは、木材利用促進法についてや木材を取り入れるメリットについてさらに詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
恩加島木材工業株式会社|コラム|“木材利用促進法”は公共施設だけではなく民間施設にも。概略から木材利用のメリット・補助金まで詳しく解説
では、具体的にはどのような特殊建築物において、“木質化”が進んでいるのでしょうか?ここでは建物の用途別にその理由や実情を紹介します。
医療施設・福祉施設
国土交通省が発表した2021年度の建築物着工統計によると、医療・福祉用建築物の総数6,918棟のうち、木造棟数は3,217棟(46.8%)です。ちなみに2016年度は43.1%で、5年間で微増しています。
木材利用促進法が制定されたにも関わらず、大幅な増加が見られなかった原因は、主に大規模施設での木質化が進まなかったことと考えられています。残念ながら、まだまだ木質材質における感染リスク等衛生面の問題に関するエビデンスが不足しており、木造事例も少ないため、現在では国や自治体が補助金を設けるなど、積極的に木造化を推進しています。
では、医療・福祉施設において木質化を進める具体的な方法はあるのでしょうか?
これらの施設は、その用途に使う床面積の合計が3,000㎡を超えると内装制限の対象となります。しかし、一方で木の持つぬくもりやリラックス効果は、施設利用者にとって良い影響を与えるとされているのも事実です。そのため、最近では中小規模だけではなく、大規模な施設においても積極的にインテリアに”木”が取り入れられつつあります。
様々な緩和措置を活用したプランがありますが、その中でも特に多いのが「分棟」型にする方法です。一棟ごとの延べ床面積を制限対象の3,000㎡未満に抑えるなど、平面計画や配置を工夫することで緩和措置の対象となり、柱や梁などの木構造躯体も現し(あらわし)で活用できるようになります。それによって、利用者がまるで家にいるような安心感を与えることも可能でしょう。
また、住宅スケールの施設は、老人介護施設などで注目されているユニットケア(※)との親和性も高く、基礎工事費の削減などのコスト面でもメリットもあります。
※ユニットケアとは、自宅に近い環境で他の入居者や介護スタッフと共同生活をしながら、個性や生活リズムに合わせた暮らしを送りつつサポートを受けられる介護手法のことです。
教育施設
教育施設においては、まだまだ全国的に木質化は進んでいません。2016年に着工した教育・学習支援業用建築物5,956棟のうち、木造はわずか1,219棟(20.4%)、2021年も4,207棟中862棟(20.4%)とほとんど増えていません(データ元、建築物着工統計)。その要因として考えられるのは、建築基準法によって高い耐火性能を求められるためです。(建築基準法27条)
では、学校などの木質化はできないのでしょうか?実は、文部科学省では「木の学校づくり」と称して、木造校舎建築を推奨しています。なぜなら、木造校舎には下記のようなメリットが期待されるためです。
- 木の床は疲れにくく、子供の成長の妨げにならない
- 木の香りによる鎮静効果により、集中力がアップする
- 木目の美しさや経年変化によって増す風合いは、物を大事にする心を育てるとされており、情操教育にも効果的
- 森林や山への興味を引きつけ、環境教育や地域学習のきっかけとなる
- 国産材や地域材を利用することで、「木育」の教材となる
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下記コラムでは、木材利用促進法についてや木材を取り入れるメリットについてさらに詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
恩加島木材工業株式会社|コラム|“木育”とは?その目的やサスティナブル社会との関連性は? メリットから補助金について徹底解説
教育施設は特殊建築物ではあるものの、内装制限の対象ではないため、天井や壁に木質材を用いることは比較的容易です。しかし、構造体から木造にこだわる場合には、準耐火建築物とする必要があり、階数を2以下に抑えなくてはいけません。
商業施設
階数が3以上の大型商業施設は、特殊建築物の中でも耐火建築物に該当するため、一般的な木造建材を用いることはできません。しかし、最近は首都圏内であっても、階数が2以下の中型商業施設が増えているため、内外装に“木”を積極的に取り入れる事例は増えています。また、件数は未だ少ないものの、耐火構造部材として認定を受けた木材を用いた商業ビルも生まれています。
それほど各企業が木材を利用する理由は、企業及び施設の環境問題への取り組みを全面にアピールできることや、温かみのあるデザインで利用者にとって居心地の良い空間を作るためと考えられます。
また、地産材を活用することで、その地域のシンボル的役割を担うこともできるため、大手ゼネコンやデベロッパーを中心に積極的に商業施設の木質化に取り組んでいます。
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下記コラムでは、建物の“木質化”について詳しく解説しています。
恩加島木材工業株式会社|コラム|今“内装の木質化”が注目されている訳とは? その効果や取り入れるべき建築物について徹底解説
恩加島木材の製品は内装制限でも使えます
私たち恩加島木材では、天然木をスライスした突板を熟練の技術で貼り合わせた不燃・難燃材料を製造しています。これらは、厳正な発熱性試験などを経て国土交通大臣からの認定を受けている独自の不燃材料です。
そのため、内装制限の対象となる施設においても使用可能な上に、天然木突板による無垢材のような風合いとデザイン性を表現できます。その他、一部商品においては抗ウイルス塗装に対応している製品もございますので、施設用途問わず安心して採用していただけます。
内装制限のある施設の設計・デザインをする際は、ぜひ当社の突板練付不燃板をご検討ください。
不燃認定番号 | PANESSE(パネッセ) ・フネンボード t6・t9【NM-1272】 ・フネンボード t12~t36【NM-1368】 ・フネンシート 法定不燃材下地【NM-5336】 ・フネンシート FGボード下地【NM-5337】 ・フネンボート t15 不燃複合版【NM-5420】 |
難燃認定番号 | PANESSE(パネッセ) ・難燃ボード【RM0060】 |
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下記ページでは当社製品については、各種認定について紹介しています。合わせてご確認ください。
恩加島木材工業株式会社|製品案内
恩加島木材工業株式会社|各種認定
恩加島木材の取り組み
私たち恩加島木材では、国内各地の地産材利用も積極的に行なっております。また、突板の流通市場に頼らずに原木市場や製材所から直接仕入れて、自社で選木・加工・販売することも可能です。原産地を日本国内に限定した樹種を常時取り扱っているほか、地産材を利用した突板も数多くご注文いただいております。建物の社会的価値を高めるためにも、ぜひ国産材を使った突板製品をご検討ください。
香川県多度津町庁舎(香川県産材利用)
某百貨店 什器(大阪府内産桧利用)
新居浜商業高校 体育館(愛媛県産材利用)
京都女子大学(京都府内産桧利用)
京都 某ホテル(京都府内産利用)
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下記ページでは、当社が常時取り扱っている国産材を使った突板のラインナップや納入実績を紹介しています。ぜひご覧ください。
まとめ|内装制限のある建築物には認定を受けた材料を
内装制限は建物利用者の安全を守るために定められたものです。ひと昔前までは、内装制限によってデザインの幅が狭まってしまうケースもありましたが、技術が発展した現在においては、ぬくもりの感じられる木質素材を用いても条件をクリアすることは決して困難ではありません。
対象となる特殊建築物の設計デザインをする場合には、ぜひ“木”を使うことを諦めるのではなく、不燃・難燃認定を受けた材料を検討してみましょう。
私たち恩加島木材では、天然木の風合いを活かした不燃・難燃製品を多く製造しております。化粧板だけではなく、ルーバー・リブパネル、有孔ボードなども取り扱っておりますので、空間全体をトータルコーディネートすることも可能です。統一性のある洗練されたデザインをご希望の際には、ぜひに一度恩加島木材にご相談ください。
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当社の納入実績は下記ページをご覧ください。
恩加島木材が現場の様々なご要望にお応えします
「プリントシート材の木目だと味気なく個性が出せない」「天然木を使用したいが無垢材だとコストが高くメンテナンスが不安」そんな時には、天然木突板を使っておしゃれで安らげる空間をデザインしてみませんか?恩加島木材の歴史ある熟練技術で、デザイナー様や設計士様の疑問や要望にお応えします。随時、木材選定から各種オーダー加工に関するご相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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